公開日 2021年8月3日

新型コロナの不都合な真実 世界経済は「失速」に変わるおそれ

昨年末以降、欧米先進国ではワクチン接種による経済正常化の進展によって景気が急回復。他の国々もそれに続くとみられたが、ここへきて世界経済の成長のモメンタムは低下している。
新型コロナの不都合な真実 世界経済は「失速」に変わるおそれ

デルタ株の影響で、経済の「減速」予想が「失速」に変わるおそれ

世界経済は、中国が昨年4~6月から強権的な手法で感染を封じ込めインフラ投資などで景気を回復させ、それに続いて昨年末以降、欧米先進国ではワクチン接種による経済正常化の進展によって景気が急回復した。

他の国々もそれに続くとみられたが、実際には、ここへきて逆に、世界経済の成長のモメンタムは低下している。

中国経済

中国経済の成長は財政金融面からの引き締めの影響で、すでに今年に入り減速が明らかになった。

コロナ前の2019年の中国の経済成長率は、年率6%を超えていた。コロナショックで20年1~3月にGDPは一時落ち込んだが、20年10~12月にかけて持ち直し、20年10~12月には再び6%超の成長に復帰した。

しかし、21年入り後の成長率は前年の落ち込みの反動分を除けば、むしろ鈍化しており、2年前比年率の成長率は、21年1~3月が5.0%、4~6月が5.5%と6%以下にとどまっている。

中小零細企業の収益悪化懸念に対応して、人民銀行は7月に入り預金準備率の引き下げ実施に踏み切った。

だが、昨年の景気刺激策により不良債権問題再燃や不動産価格高騰といった副作用が表面化しているため、本格的な金融緩和への転換は望めない。中国の景気減速は続きそうだ。

欧米経済

一方、欧米経済は4~6月にかけて急成長したが、年後半も高成長が持続するかどうかについては次第に不透明感が強まっている。

先週発表された4~6月のGDPは、米国が前期比年率年率6.5%と事前のエコノミスト予想(ブルームバーグ集計)の8.4%を下回った。

今後の予想については、7~9月が7.1%と再加速が見込まれているが、かなり怪しい。その後は10~12月5.0%、22年1~3月3.5%、4~6月3.0%、7~9月2.5%と減速していく予想で、ちょうど現在が成長率のピークであるという見方だ。

ユーロ圏のGDPもほぼ同様の動きで、4~6月が前期比2.0%と高成長となった。今後の予想も、7~9月が2.4%と加速が見込まれているが、その後は10~12月1.3%、22年1~3月0.8%、4~6月0.7%、7~9月0.6%と減速が予想されている。

ただ、欧米経済の成長率が年央にピークアウトし、21年後半以降鈍化していくというのは、以前から予想されていたもの。

その意味で成長率の数値が徐々に低下することは驚くべきことではないが、「減速」がひょっとすると「失速」に変わるかもしれないとの懸念が頭をもたげてきている。

そうした下振れの不安を強めている一番の要因はデルタ株。ワクチン接種を嫌う人々がかなり多いという当初の見方通り、ワクチン接種で先行した欧米の接種率はその後、さほど高まっていない。

100人当たりのワクチン接種回数は、最も高いカナダで131回、イギリスが125回、中国が115回、ドイツが110回、米国が103回だ。ちなみに日本が66回にすぎない。一人2回接種を前提とすれば、高いとされる欧米先進国の接種率も50~65%にとどまる。

通常7~8割とされる集団免疫のレベルには達しておらず、従来株であればともかく、感染率の高い変異株の場合、この程度の接種率で感染を抑制できるとは思えない。

デルタ株の場合、感染を抑制する集団免疫のレベルは7~8割ではなく、より高い9割程度とみなければならないだろう。

この先、年末にかけて、米国などで感染が再び拡大していく可能性がある。確かに、ワクチンは入院率あるいは重症化率を低下させる効果はあるが、再度のロックダウンなどが実施され、それが経済に悪影響を及ぼす影響はあるだろう。

予想以上の急速な成長鈍化があれば、経済が失速しているとの印象が強まるおそれがある。

「パンデミックは終わらない」との見方が米長期金利低下の理由

フォーリンアフェアーズ7月号で、伝染病学者であるラリー・ブライアントなどの研究者は「新型コロナの不都合な真実~永続化するウイルスとの闘い」と題して、

「新型コロナウイルスは根絶できない」
「パンデミックが最終局面にあるわけではない」
「多くの人が短期間で終わることを願った危機は終わらず、現実には、驚くほどしぶといウイルスに対する長くゆっくりとした闘いが続く」

と述べている。

理由として以下の点を挙げている。

1)新型コロナウイルスはすでに10数種の動物種に感染を広げている。

2)十分なワクチンを生産・供給するには長い時間がかかるし、反ワクチンムーブメントの存在も集団免疫を達成させる見込みを遠ざけており、世界規模の集団免疫も期待できない。

3)新種の変異株が次々と登場している。

4)より高度な耐性をもつか、より感染力の強い新型の変異株については、全く新しいワクチンが必要になるかもしれず、この場合、ほぼ200カ国の数十億人にワクチンを接種するというロジスティック上の大きな課題に世界は直面する。

5)現在の検査キットをすり抜ける変異株が出てくる恐れもある。やや悲観的過ぎるきらいもあるが、現在の米国の長期債利回り低下の背景には、「感染の再拡大、再々拡大によって経済の正常化への足取りが予想以上に緩慢なものになるのではないか」といったリスクシナリオへの懸念が織り込まれているのではないかと思われる。

2021/8/2の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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新見未来

新見未来

エコノミストとして、シンクタンク、投資顧問会社などで経済分析、資金運用とアセットアロケーション業務に携わる。

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