公開日 2021年7月15日

原油市場の3つの「謎」

ガソリンや原油の需要が、経済正常化に伴って急増していたとすれば、在庫は例年よりも急速に減少していても不思議ではないが、そうはなっていない。原油市場の現状は、確かに需要超過状態だが、ストックの過剰在庫のことを考慮すると、必ずしも現在の需給が逼迫しているとは言いにくい。にもかかわらず、価格だけがかなり高い傾向にある。
原油市場の3つの「謎」

原油市場は本当に逼迫しているのか?

このところの原油市場の動きをみていると、「謎」とも言えるような、説明しにくい部分がある。

一つ目の謎は、需給逼迫についての謎だ。原油価格は値上がり傾向を続けており、その背景に、経済の正常化に伴う原油需要の急増があると言われているが、需給は本当にそれほど逼迫しているのか。

OPECプラスの協調減産により、確かに、世界の原油需要・供給のバランスは昨年後半以降、需要超過に転じている。

IEA・オイルマーケットレポートによれば、昨年7~9月、10~12月の需要超過幅は約200万バレル/日程度、今年に入ってからも需要超過幅は、約100万バレル程度となっている(図1参照)。

図1.png

ただ、昨年1~3月、4~6月の供給超過幅がそれぞれ600万、900バレル/日と極めて大きかった。この間に、世界の原油余剰在庫が急拡大した。余剰在庫は現在も解消されないまま残っている。

OPECプラスが現状の減産を継続し、しかも、もしIEAが予想するように、世界の原油需要が世界経済の正常化に伴って2021年9,640万バレル、22年9.950万バレルと急回復する(2019年の原油需要は9,990万バレル)というシナリオが実現できれば、2022年4~6月頃に、余剰在庫がようやく一掃可能になる計算だ。

つまり、フローの需給をみると現状は、確かに需要超過状態だが、ストックの過剰在庫のことを考慮すると、必ずしも現在の需給が逼迫しているとは言いにくい。

一方、経済正常化が進む米国において、原油需給動向を示す1つの指標として、米国の原油・ガソリン在庫の動きが注目される(図2参照)。

図2.png

これをみると、原油在庫、ガソリン在庫ともに、2020年に比べ大幅に減少しているが、ガソリン在庫については2018年、19年とほぼ同水準であり、原油在庫については比較的、在庫が高水準だった2019年とほぼ同水準だ。

ガソリンや原油の需要が、本当に経済正常化に伴って急増していたとすれば、在庫は例年よりも急速に減少していても不思議ではないが、そうはなっていない。

ガソリン消費は確かに足元で増加しており、7月2日までの4週間平均のガソリン消費量は原油換算で日量1,026万バレルとなった。これは、2019年同期(1,037万バレル)、18年同期(1,027万バレル)とほぼ同じだ。

現在のガソリン価格は約3.1ドル/ガロンに上昇しているが、2019年同期は同2.8ドル/ガロン、18年同期は2.9ドル/ガロンだった。

需要はようやくコロナ前の水準に戻ったところで、在庫からみても、さほど需給ひっ迫感はない。にもかかわらず、価格だけがかなり高いということになる。

一方、需給に影響を及ぼしているかもしれない要因として、米国内シェールオイルの生産量が減少している点が挙げられる。

主要シェールオイル産地のシェールオイル生産量は、2018年12月がピークで日量900万バレル程度だったが、直近6月時点では同728万バレルと200万バレル弱減少している。

後述するように、これが謎を解くカギの1つだろう。

サウジアラビアはなぜ減産継続にこだわっているのか?

2つ目の謎は、なぜ、原油価格の上昇が続くなかで、サウジアラビアが減産継続にこだわっているのかという点だ。

通常、原油価格が上昇すれば、相対的に生産コストが割高の生産国のシェアが高まり、サウジアラビアのシェアは低くなる。

生産コストが数ドル/バレルと言われるサウジアラビアにとって、自国の生産量を削減してまでこれ以上原油価格を支える必要があるかどうかは謎だ。

また、消費国である日米欧先進国にとっても、原油価格上昇によるインフレや交易条件悪化は、景気悪化を通じて結果的に原油需要の減少につながるおそれがある。

そうなれば、生産国であるサウジアラビアにとっても悪影響が大きい。さらに、先進国では、CO₂排出量削減のため、エネルギー源を化石燃料から再生可能エネルギーに切り替えようとしているところだ。

原油価格上昇は、そうした再生可能エネルギーへのエネルギー転換の流れを加速させるため、サウジアラビアを含めたすべての原油生産国にとってはマイナス面が大きいだろう。

合理的に考えれば、サウジアラビアはいつ増産に踏み切ってもおかしくない。

2021/7/12の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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新見未来

エコノミストとして、シンクタンク、投資顧問会社などで経済分析、資金運用とアセットアロケーション業務に携わる。

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