公開日 2024年7月30日

AIで経済成長が加速するのか?

人々はAIを利用したネット検索サービスに対価を払うのか?よほどの高付加価値、高機能なものにならない限り、あるいは、特別な目的がない限り、利用者が、最新AIを利用した、有料の検索サービスにお金を払うとは思えない。「AIが経済成長を加速させる」という、株式市場の期待する楽観的なシナリオを裏付ける証拠は少ない。
AIで経済成長が加速するのか?

AIの利用でGDPが加速するかどうかが明らかでない

米S&P500種株価指数は2024年4月19日の4,967をボトムに、7月16日の5,667まで約14%上昇したが、その後、やや軟化している。7月26日時点では5,457と高値から4%程度下落した。

ただ、S&P500種株価指数の株価収益率(株価÷1株当たり利益実績)は26日時点で25.5倍と割高感が強い。

言うまでもなく、AIブームが株価収益率を高めている。確かに、世界的な半導体の売上高は増加している。だが、この増加は、スマホやPCの買い替えサイクルによる循環的な要素も大きい。

また、企業は、AI開発(ディープラーニングなど)のため、データセンター拡充などに多額の投資を行っている。AI開発のために使われるGPUについては、エヌビディアがその市場を独占しているため、エヌビディアの売上が急増している。

確かに、これらは「AI関連」の支出増加、売上増加にほかならない。だが、肝心な点が明らかでない。AIを利用することで、本当に、AIを使った企業の稼ぎが増え、国全体の経済成長が加速するかどうかという点だ。

ゴールドラッシュのときに儲けたのは、金を掘っていた人ではなく、ショベルを売っていた人だった。同様に、1990年代末のITバブル時には、確かにPCの売上が急増したが、インターネットの利用が先進国の成長を大きく押し上げることはなかった。

AIはヒトの労働を代替する。AIの利用によって、確かに、企業は人件費を削減でき、それによって、コスト削減という形で利益を増やすことができる。

だが、すべての企業がAIを利用して、人件費削減を行なえば、雇用者所得が減少し、個人消費の減少により、マクロの経済は収縮するおそれがある。

株式市場は、AIの利用によってすべての企業は売上を高めることができ、AIの利用によって国全体のGDPは増加するとみているようだ。

だが、もし、それが事実でなければ、株式市場にとっては、いわば「不都合な真実」になるだろう。

ITは労働生産性を高めたが、実質GDPを増やせなかった

一般的に、技術革新は生産性を押し上げ、長期的に経済成長が加速して、雇用も増加すると考えられてきた。

実際、過去の蒸気機関の発明、電気の利用等は経済を発展させた。蒸気機関はヒトの肉体労働を代替した。

そのために一時的に生産現場のブルーカラーの仕事が奪われたが、経済成長によって製造業以外でより多くの雇用が生まれた。

だが、コンピュータやインターネットなどITによる1980年代以降の技術革新や最近のAI技術はそれ以前の技術革新にくらべて、労働を代替し、労働生産性を高める効果だけが大きいようだ。

その結果として、雇用を増やすより雇用を奪う面が大きくなる。

戦後の米国において、技術革新などによる労働生産性上昇が実質GDPや雇用にどのような影響を及ぼしたのかを調べてみたのが第1図だ。

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この図でみる通り、1960年代前半や1980年代前半に労働生産性上昇率が加速する局面がみられたが、この時は労働生産性上昇率が加速した後、実質GDP成長率や雇用増加率が加速した。

しかし、1990年代後半から2000年代前半にかけて労働生産性上昇率が加速した局面では、実質GDP成長率、雇用増加率がともに鈍化した。

労働生産性(実質GDP÷雇用)の分子に相当する実質GDPの成長率が鈍化したにもかかわらず労働生産性上昇率が高まったのは、実質GDP成長率の落ち込み以上に雇用増加率が大きく落ち込んだためだ。

蒸気機関の発明、電気の利用等という過去の技術革新は、労働生産性(実質GDP÷雇用)の分子である実質GDPを増加させることで労働生産性を高める効果があった。

これに対して、ITによる1980年代以降の技術革新や最近のAI技術は、労働生産性(実質GDP÷雇用)の分子である実質GDPを増加させなかった。

分母である雇用(労働投入量)を小さくすることで、労働生産性を高める効果だけが大きかった。

AIが労働生産性(実質GDP÷雇用)を高めるとしても、分子である実質GDPが増加するケースと、分母である雇用が減少するケースでは全く異なる。

例えば、AI技術導入前の米国の実質GDP成長率が2%、雇用増加率が1%、労働生産性が1%だとし、AI技術は、労働生産性を1%から3%に高める効果があるとしよう。

その際、もし、AI技術が実質GDP成長率を高める効果があるとすれば、実質GDP成長率は4%に加速し、雇用増加率が1%、労働生産性が3%となる。

そうではなく、AI技術が実質GDP成長率を高める効果がないとすれば、実質GDP成長率はそのままの2%、雇用がマイナス1%と減少し、労働生産性が3%となる。

AIブームのなかで、株式市場が期待しているのは、言うまでもなく、分子である実質GDP成長率が加速する、前者のシナリオだろう。

それが本当なら、割高にみえる株価も正当化できる。しかし、後者のシナリオが事実なら、高い株価は単なるバブルに終わるおそれがある。

どちらが本当なのか。大手IT企業の決算内容などからも、その手がかりを見いだせるかもしれない。

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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2024/7/29の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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新見未来

エコノミストとして、シンクタンク、投資顧問会社などで経済分析、資金運用とアセットアロケーション業務に携わる。

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