公開日 2020年9月15日

FEDの金融緩和新指針が株価を下落させるおそれ

8月27日に開かれた臨時のFOMC(米連邦公開市場委員会)で「長期目標と金融政策戦略」の見直しが決まった。今回の新指針では雇用に一段と力点が置かれることになったわけだが、市場にはどのような影響を及ぼすのか。
FEDの金融緩和新指針が株価を下落させるおそれ

雇用最大化、物価安定という2つの目標を微調整

8月27日、臨時のFOMC(米連邦公開市場委員会)が開かれ、そこで米国の完全雇用を復活させ、物価を健全な水準に戻すための新しい指針として「長期目標と金融政策戦略」の見直しが決まった。

新指針は9月15~16日予定のFOMCで公表されると言われていたが、8月27日のジャクソンホール会合におけるパウエルFRB議長の講演に合わせ、前倒しで公表されたようだ。

FRB(米連邦準備制度理事会)とFOMC(以下、両者をFEDと総称する)には、金融政策運営に当たって、もともと雇用最大化、物価安定という2つの法的使命が課されている。

物価安定のみを使命とし、物価安定を通じて経済成長の達成を目指す日銀やECBとは異なり、直接的に雇用最大化を使命とするのは米国の金融政策の特徴だが、今回の新指針ではこの2つのうち雇用に一段と力点が置かれることになった。

具体的には、

  1. 物価よりも雇用を重視し広範かつ包括的な雇用に重点を置く
  2. インフレ率が一時的に2%を上回ることを容認し、一定期間で平均2%になるように目指す(平均インフレ目標の導入)

ことが決まった。

これまでFEDは、米国景気が回復・拡大していく局面で、低金利状態を続けて利上げが遅れると雇用が増え過ぎ、賃金上昇によってインフレ率を加速させるとして、失業率が自然失業率と推測される水準付近に低下すると金融引き締めを行い、景気の過熱、雇用の増え過ぎを抑制してきた。

たとえば、リーマンショック後の最初の利上げは2015年12月。インフレ目標の参照変数としてFRBが重視しているコアPCE(個人消費支出)デフレータの前年比上昇率はこの時1.2%と、物価は安定していた。

しかし、

  1. 推計値として計算される自然失業率はたえず変化し推計誤差も大きいため、失業率が自然失業率付近に低下すれば利上げするという政策も間違うおそれがある。
  2. しかも現実問題として失業率が過去最低水準に下がってもインフレにはなっていない。

といった問題がある。

このため、新指針では、実際の失業率と自然失業率との差を判断基準とするのではなく、あくまでも雇用の最大化を追求する。どういった指標を用いるかは未定だが、「最大雇用の不足分」を判断基準とすることになる。

今回のFOMC声明によれば、新指針への変更は、労働市場の改善が特に中低所得層に利益をもたらすという理解を反映したものであると述べている。

これは中低所得層にも幅広く雇用改善の動きが浸透していかない限り、引き締めは行わないことを示唆するものだろう。

これまでのFEDのインフレ抑制姿勢がインフレ率を鈍化させた

物価について言えば、FEDは2012年から2%の物価上昇率を公式目標にしているが、FEDのインフレとの闘いの歴史は古い。

1960~70年代のインフレ加速に対応して、1979年FRB議長に就任したポール・ボルカー氏は、同年10月、マネーサプライの伸び抑制などのインフレ退治策をとり、それがインフレの鎮静化につながった。物価安定を目指すFEDの姿勢はその後も続けられ、インフレ率の鈍化傾向は続いた。

コアPCEデフレータは1970年代の年率6.1%、80年代同5.0%、90年代同2.3%、2000年代同1.9%、2010年代同1.6%と鈍化した。

2%物価目標が公式に示された後の、2012年以降、PCEコアデフレータの前年比上昇率が2%を上回ったのは、2012年1~4月、18年3~12月だけで、2.1%が最も高い伸びだった。

実際の物価上昇率が鈍化を続け、2%目標設定後もほとんどその目標値を下回っていたのは、FEDが景気回復時において早い段階から物価上昇を予想して、引き締めを実施していたからにほかならない。

長期的な物価上昇率鈍化が、すべてインフレ抑制を目指すFEDの姿勢によるわけではないが、物価上昇を容認しない金融政策が物価抑制につながったことは間違いない。

そうしたFEDのインフレ抑制姿勢と現実の物価上昇率鈍化が期待物価上昇率を鈍化させ、さらに期待物価上昇率鈍化が現実の物価上昇率をも鈍化させることになった可能性が高い。

自然利子率と物価上昇率の低下でゼロ制約を受けやすくなっている

ところで、米国の自然利子率(経済を悪化させず過熱もさせない実質金利の均衡水準)については、米国の潜在成長率の鈍化などにより、長期的に低下していると推計されている。

サンフランシスコ連銀やウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁らの推計によれば、直近の米国の自然利子率は1%弱と推計されている。

仮に、物価上昇率が1.5%だとすれば、自然利子率と物価上昇率を合計した名目均衡金利(いわゆる中立金利)は2.0~2.5%程度だということになる。景気後退時に金融緩和により景気を回復させるため、FEDは過去、5~7%程度の利下げを実施してきた。

メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。

全文を読みたい方は、イーグルフライ掲示板をご覧ください。

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新見未来

エコノミストとして、シンクタンク、投資顧問会社などで経済分析、資金運用とアセットアロケーション業務に携わる。

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