公開日 2024年6月24日

自国優先主義が強まればユーロは分裂のおそれ

現在の状況と2009~12年時との大きな違いは、EU懐疑論、ユーロ懐疑論が金融市場だけにとどまらず、 右派政党を支持するという形で、ユーロ圏各国の国民全体に広がっていることである。格差が広がるなか、既存の政治エリート層に対する国民の不満が高まり、極右とされるポピュリスト政治家への支持が高まっているのは、欧州も米国と同様だ。そして自国優先主義はフランスだけにとどまらず、程度の差はあれ、ユーロ圏全域に広がっている。こうした自国優先主義の流れが止まらなければ、ユーロはいずれ分裂・崩壊に向かうことになるだろう。
自国優先主義が強まればユーロは分裂のおそれ

仏総選挙ではルペン率いる国民連合が第1党となる可能性が大

EUの中核であるフランスの政治経済の混乱は、最終的に単一通貨ユーロの分裂につながるおそれがある。そうしたリスクを金融市場は意識し始めたのだろう。フランスの債券・株式市場は混乱し、ユーロも軟調に推移している。

まず、現在までの状況を整理してみよう。

6月6日~9日に実施された欧州議会選挙では、中道右派の欧州人民党(EPP)グループが議席を伸ばし、中道・親EU会派がなんとか過半数を維持した。

だが、ジョルジア・メローニ首相が率いる「イタリアの同胞」などが所属する「欧州保守改革グループ」、同じく極右・右派でフランスのマリーヌ・ルペン氏が率いる「国民連合(RN)」などが所属する「アイデンティティと民主主義グループ」の議席が伸び、「ドイツのための選択肢(AfD)」など無所属の右派政党も議席を伸ばした。欧州議会は全体的に右傾化が進んだ。

この結果を受けて、何を思ったのか、フランスのマクロン大統領は、欧州議会選挙とは異なる結果を期待して、フランス国民議会(下院)を解散した。6月30日、7月7日に総選挙が実施されることになった。

2022年のフランス国民議会選挙で、マクロン大統領の会派はすでに議会で過半数を失っていた。マクロン大統領の議会運営は困難となり、大統領は憲法の規定に基づく法案の強行採択をたびたび行ってきた。

もともと、マクロン大統領は大企業・富裕層の大統領というイメージが強いが、こうした独断的な政治手法が国民の反発を招いた。思い出されるのが、2016年、イギリスでキャメロン首相が支持離れを食い止めるために、EU離脱の是非を問う国民投票という賭けに打って出たことだ。

この時、キャメロン英首相は、「イギリス国民はEU離脱のコストが大きさから離脱に反対する」と期待した。だが、キャメロン首相の思惑とは違い、結局、イギリスはEUを離脱することになった。EU離脱の悪影響はいまだに色濃い。

フランスの総選挙は6月30日が第1回投票、7月7日に第2回投票と予定されている。

1回目の投票で有権者の4分の1以上の票数を獲得する候補者がいなければ、選挙区の有権者数の12.5%以上の票を獲得した候補者が2回目の決戦投票に進むというシステムになっている。

最近の世論調査をみると、支持率トップは、極右・右派でフランスのマリーヌ・ルペン氏率いる「国民連合(RN)」、2番手が、左派の「新人民戦線(NFP)」で、中道与党連合は3番手と大きく出遅れている。

このため、多くの選挙区で、決戦投票は、国民連合対新人民戦線の構図となるだろう。結果として、国民連合と新人民戦線がそれぞれ大きく議席を伸ばしたうえで、国民連合が第1党になり、与党の議席は大幅に減少すると予想されている。

大統領と議会多数派(首相)の党派が異なる「ねじれ」現象を、フランスではコアビタシオン(保革共存)と呼ぶ。予想通りになった場合、ねじれは過去にみられないほど酷くなるとみられる。内政は停滞し、経済は危ういものになるだろう。

国民連合の経済政策は、端的にいえば、ばらまきだ。そのため、財政赤字の拡大が予想される。フランスの2023年の財政赤字のGDP比が5.5%とEUの基準値をすでに大きく超え、政府債務残高は同110.6%とギリシャ、イタリアに次いで高い。

フランスの長期国債の格付けについては、財政指標の悪化を理由に、5月31日にS&PがAAからAAマイナスに引き下げたばかりだ。財政状況がさらに悪化すれば、さらなる格下げも予想される。

国民連合の公約の詳細は明らかにされていないが、
(1)約200億ユーロをかけて燃料やエネルギーにかかる消費税を削減する、
(2)EUからエネルギー政策の主導権を取り戻す、
(3)定年を60歳に引き下げ、一部の公務員の賃金を引き上げること、
などが公約として掲げられてる。

また、ルペン氏は、2017年の大統領選まで「ユーロ脱退」を主張していた。だが、前回2019年の欧州議会選挙を前に、過激な主張を抑えた。

単一通貨ユーロの問題に関しては、ユーロ懐疑主義的な主張を幾分、軟化させている。

具体的には、
(1)ユーロを実体経済を支える手段として利用するべき、
(2)貿易赤字を抱えるフランスにはさらなるユーロ安が望ましい、
(3)欧州中央銀行の責務に失業対策を組み込むべき、
との考えを示し、ユーロ圏にとどまったうえで、EU内から改革を実施する方針を示した。

ルペン氏は、少なくとも2027年の大統領選挙までは過激な主張を封印するだろう。ただ、EUの体制については、欧州委員会に権力が集中しすぎ、民主的な正当性に欠ける点を問題視している点で、EU体制を重視してきたマクロン大統領の考え方とは大きく異なる。

ドイツとともにEU統合を主導してきたフランスが自国重視の姿勢を強めるとすれば、EUの求心力低下は避けられない。

2009~12年の欧州債務危機時の金融危機再燃も

今回の問題で、フランス国債の価格が値下がり(利回りは上昇)し、フランス株価は下落し、つれてユーロ相場も軟調に推移している。

フランスとドイツの国債利回りの格差は、2012年以来の水準に広がった。フランスの国債利回りとドイツの国債利回りの格差が拡大したのは、以下のことが原因だろう。

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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2024/6/24の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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新見未来

エコノミストとして、シンクタンク、投資顧問会社などで経済分析、資金運用とアセットアロケーション業務に携わる。

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