公開日 2023年5月8日

植田日銀の金融政策姿勢

植田総裁としては、インフレが多くの国民の目から非常に大きな悪影響をもたらす状況になってから、あえて遅めのタイミングで、政策を正常化する方が良いと考えているのではないかとも思われる。ただ、そうした判断は、いうまでもなく、純粋に経済的な面から言えば、大変なリスクを伴うことになる。
植田日銀の金融政策姿勢

金利低下のフォワード・ガイダンスの文言を削除

4月27~28日の政策決定会合で、日銀は大規模緩和の継続を決めた。

ただ、先行きの政策変更について示唆する「フォワード・ガイダンス」について、「政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」としていた緩和バイアスの文言が削除された。

4月の本レポートで述べたが、IMFで日本担当ミッション・チーフを務めるラニル・サルガド氏は、日本のインフレ見通しについて「上振れリスクと下振れ双方向のリスクがある」「われわれの見解ではバイアスは中立的であるべきだ」とし、金融政策についても、日銀は金融政策バイアスを緩和から中立に変えるべきだと述べていた。

現在のインフレを巡る環境は「下振れリスクが大きい」状況ではなく、「上振れリスクが大きい」か「少なくとも上下同等」と考えられる。

そうした考えに沿った政策変更が、今回のフォワード・ガイダンスの文言削除だったと考えられる。

「基調的物価」を重視する姿勢だが…

最初の政策決定会合を終えた植田総裁は、記者会見でも学者らしい丁寧な説明で市場との対話を目指したが、相変わらずわかりにくかったのは物価についての説明だ。

もともと日銀がインフレ目標とする物価指標は生鮮食品を除く総合消費者物価(いわゆるコア消費者物価)の前年比」で「2%」が目標だ。

ところが、黒田前総裁は、このコア消費者物価前年比が22年4月以降ずっと2%を上回り、加速しているのを横目に「持続的、安定的な物価上昇ではない」「賃金上昇を伴った物価上昇が必要」として、インフレ率が目標の2%を上回るのを無視してきた。

今回、記者会見での植田日銀総裁の説明は「(2%の物価目標の実現を判断するうえで重要な)基調的な物価は徐々に上昇し始めているが、持続的、安定的に2%に達していない」「(2%を上回っていくかどうかについて)まだ自信の度合いは低い」というものだった。

従来の指標であるコア消費者物価ではなく「基調的な物価」が重要というわけだが、では、植田総裁が「2%に達していない」と明言する「基調的な物価」とは、具体的に何なのか?

通常、基調的な物価と言えば、一時的な要因、本質的でない要因などを取り除いた物価指標のことだ。「生鮮食品を除く消費者物価」も天候などに左右されやすい生鮮食品の動きを除いた基調的な物価の一つだ。

だが、植田総裁は所信表明の場で「基調的なインフレ動向は一言でどの指標を見れば分かるといった簡単なものではなく、あらゆる手法を使って探り当てていくもの」と述べていた。

また、総裁は「この指標を見れば基調的な動きが判断できるというものはない。いろんな人がいろんな物価指数を言うなかで、タマネギの皮をむいているようなもので芯がどこにあるかわからないという指摘もある。さまざまな指標や賃金を含めてみることで基調を判断するしかない」とも述べていた。

つまり、生鮮食品、エネルギー価格、食料価格などの価格動向が一時的な要因であるとして、タマネギの皮をむくように、そうした一時的な要因を一つずつ取り除いていっても、芯に当たる基調がどこかはわからない、というわけだ。

結局、植田総裁は「コア消費者物価」」ではなく「基調的な物価」を重視し、それが2%を持続的・安定的に上回ることを目指して政策運営を行おうとしている様子だが、肝心の「基調的な物価」は何をみればいいのか、本人でないとわからない。

いや、本人もよくわからないと言っているわけだ。ある意味で、非常に恣意的な政策運営にも思える。

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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
本記事は2023/05/08の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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新見未来

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