公開日 2022年4月12日

円安が景気を押し上げなくなった理由

1995年以降の円安傾向では、円安が日本の輸出を押し上げることがなくなった。では、円安が輸出数量を増やさなくなってしまったのは、なぜだろうか。
円安が景気を押し上げなくなった理由

1995年以降の円安局面では、円安でも輸出は増えなくなった

かつて円安は輸出(実質輸出あるいは輸出数量)を増加させ、それを日本の景気(成長、GDP)を押し上げる効果があった。

円安による輸出の増加が貿易黒字を拡大させ、それがある程度のところで円安に歯止めをかける効果、いわば自動調節作用もあった。

しかし、今や円安が続いているにもかかわらず、輸出の顕著な増加が景気を押し上げる様子はみられなくなっている。

そのため、自動調節作用もなくなり、円安に歯止めがかからなくなっている。

古金さん図1.png

図1でみるように、日銀が推計する円の実質実効レートは、ドル円が80円台に下落した1995年4月の150.8をピークに低下傾向を続け、直近2月時点は66.5と半値以下になってしまっている。

実質実効レートというのは、物価変動を調整した円の総合的な価値を示す指標で、数値が高ければ高いほど円高で日本製品の価格面での競争力が低いことを意味する(ここでは2010=100として指数化したもの)。

実質実効レートでみて66.5という円の水準は、ドル円が1ドル=360円の水準からニクソン・ショックを受けて急落し、71年12月18日のスミソニアン協定で、1ドル=308円に切り下げられた頃(1972年2月が66.3)の水準だ。

なぜこれほどの円安のなかでも輸出が伸びなくなってしまったのか。

まず、かつての状況と現在の状況を比べてみると、数字のうえでも円相場が輸出数量の動きに反映しなくなっていることがわかる。

日本の輸出数量が世界のGDPと円の実質実効レートで説明されると考え、1980年からリーマンショック時の2008年までの年次データを用いて、関数推計すると、
Ln(日本の輸出数量)=2.80+0.69×Ⅼn(世界の実質GDP)-0.26×Ln(円の実質実効レート) 
(ここで日本の輸出数量及び世界の実質GDPは1979年=100として指数化、実質実効レートは2年移動平均)という関係が得られる。

これは、リーマンショック前までは、世界の実質GDPが1%増加すると日本の輸出数量が0.69%増加し、円の実質実効レートが1%円安になると日本の輸出数量が0.26%増加するという関係があったことを示している。

ところが、推計期間を円安傾向が始まった1995年から2021年までとすると、この式は
Ln(日本の輸出数量)=1.30+0.77×Ⅼn(世界の実質GDP)-0.05×Ln(円の実質実効レート)
となる。

世界の実質GDPが1%増加すると日本の輸出数量が0.77%増加することになり、世界のGDPと日本輸出の関係はさほど変わらないが、円の実質実効レートが1%円安になっても日本の輸出数量が0.05%しか増加しなくなった。

1995年以降の円安傾向では、円安が日本の輸出を押し上げることがなくなった。

海外現地生産比率が高まり、国内の生産能力は低下しているため、
円安でも輸出は増えにくい

では、円安が輸出数量を増やさなくなってしまったのはなぜか。

第1に、輸出メーカーの海外現地生産の高まりがある。自動車などの日本の輸出メーカーは輸出増加に伴う貿易摩擦や円高などに対応して輸出を海外現地生産に切り替えてきた。

1980年代前半に2~4%だった現地生産比率は2010年代後半には25%まで上昇し、海外に供給される日本製品の4分の1が現地生産で賄われている。

古金さん図2.png

図2をみると、海外現地生産比率が大きく高まった時期として、2つの局面があったことがわかる。

最初は、1980年代後半から2000年代前半にかけての局面であり、貿易摩擦への対応、円高に加えて、グローバルサプライチェーンの構築に向け、日本の輸出メーカーが海外に進出していった時期だ。

その後、現地生産比率はリーマンショックにより幾分低下したが、2011年以降、貿易摩擦も収まり、また円安局面で、同比率は再び高まった。

おそらくは東日本大震災後により国内のサプライチェーンが支障をきたした経験などもあって、輸出企業は日本を抜け出し、現地生産の意向を強めたのではないかとみられる。

だが、そうした現地生産比率の高まりも2015~2017年頃がピークで足元は一服している。現地生産の最も進んでいる輸送機械では2015年度の現地生産比率が48.8%まで高まったが、その後はやや低下し、19年度は44.2%となっている。

本来、現地生産は輸出を代替するもので、現地生産が増えれば輸出が減る、現地生産が減れば輸出が増えるという関係がある。

ただし、自動車産業の海外現地生産拡大につれて、自動車部品の輸出が増えるなど、海外現地生産にはその増加につれて日本からの部品や設備の輸出が増加する場合がある。2000年代までは海外現地生産比率が高まっていくなかで、そうした部品や設備の輸出も増えていた。

しかし、2010年代に入ってからは、部品メーカー、設備財メーカーなどの現地生産も一巡した可能性がある。最近の輸出動向をみると、好調に増加しているのは、化学製品などの素材で、まだ現地生産比率がさほど高くない業種だ。

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2022/04/12の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。

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