公開日 2021年9月21日

財政問題のウソ・ホント 国債は国民の貸付だから安心?

日本の国債残高の突出により国家破綻懸念がある一方で、破綻しない主張もあり混乱しています。日本が破綻するのかしないのかを判断するのではなく、各主張の何が間違っていて何が正しいのかを解説します。
財政問題のウソ・ホント 国債は国民の貸付だから安心?

財政問題を理解する

報道だけではなく、大臣・専門家・有識者などの発言を鵜呑みにしないで、正しい情報を得て自分の頭で考えることが大切な時代になりました。
なぜなら人にとって大事なところほど混乱があるからです。
混乱とは、何が正しく何が間違っているのかが分からない状態を指します。

今回、日本が破綻するのかしないのかを判断するのではなく、何が間違っていて何が正しいのかを解説します。

麻生太郎氏の発言の間違い

少し、古い話ですが、2014年、日本の国債が1000兆円になろうとしており、日本が国家破綻するという報道が多く流されていた時のことです。

麻生太郎氏、当時は副総理兼財務大臣、そして金融担当大臣である立場で、財政問題について言及した内容について検証します。

麻生氏の発言の骨子を簡単にまとめると次のようなものでした。
・日本国債のほとんどは日本人が日本円で買っている
・国債は国民の借金といわれるが、国民の貸付である
・外人が買っているギリシャ国債と違うので日本は心配ない

実際の麻生太郎氏の発言内容はこちらです。
麻生太郎氏による「日本の借金」の解説が超わかりやすい
https://logmi.jp/business/articles/14626

多くの人が今でもそれを聞いて納得しているのですが、この発言には正しい部分と間違った部分があります。

正しい部分は「日本はギリシャと違い、ギリシャ国債を買っている多くはギリシャ国民以外の外人、日本国債を買っているのはほとんど日本人」だということです。

従って国が破綻するとギリシャは外人への返済ができず、日本は国民への返済ができなくなります。

この時、麻生太郎氏は国を一つの家族として例えていたので、同じ家族のたとえで説明すると比べやすいと思います。

ギリシャのケース

父親が事業に失敗し、銀行から借りていた1億円を返済できず破産したとします。

父親が破産しても家族が連帯保証していなければ、家族の資産は減りません。

父親が破産して迷惑をするのは銀行です。これがギリシャのケースです。

日本のケース

父親が銀行から借りたのではなく母親から借りたとした場合、父親が破産すると母親の1億円の貸付金は消失し、家族の資産は1億円減ることになります。

この場合、父親が破産して困るのは母親であり家族です。これが日本のケースです。

家族以外から借りているから破産したのであって、家族から借りれば破産する必要がないので安心と言われても家族の立場では全く嬉しくありません。

国債は国民の貸付なので、破綻したら一番困るのは貸付者である国民です。
国が破綻しそうになったら国民が貸付を放棄すれば破綻しないと言われていることと同じです。このロジックでいう麻生太郎氏の安心だという主張は間違っているといえるでしょう。

国は国民の税金で回っている

国債を返済する財源の基本は、税金です。
従って国債は国民の貸付であると同時に、国民の借金のようなものといえます。

また、日本国は国民の税金で回っているので、もし国家破綻したら増税される可能性が高いです。
つまり、日本が破綻すると国民の貸付金が消失するだけではなく、その後の負担も国民が負うので二重に困ることになります。

安全だから国債が売れている?

日本国債は超低金利でも売れているのは、財政が健全な証拠という主張があります。
実際には日本の国債を海外に売りたくても超低金利ゆえに買う外人はいません。買うとしたら米国債の方が魅力的です。

現在、日本では超低金利のために、マイナス金利の社債まで売れている時です。日本国債を買っている多くは日本の金融機関で、好んで買っているわけではなく仕組み上、実質的に買うことになり消化されています。

現在は日銀が国債を買っています。これは不健全です。

参考記事

借金も多いが資産も多い?

報道や財務省も借金のことしかいわないが、日本は借金だけではなく、保有している資産も多いから心配ないという意見があります。資産と負債をバランスシート(貸借対照表)で判断する必要があるということです。

確かに財政の健全性を判断するには、資産と負債の両方を見るのが正しいです。
いくら国債を発行しても流動性のある資産があれば問題ありません。
しかし、流動性の高い資産があるなら国債を発行する必要がないといえます。

日本は確かに資産も多い国ですが、国の資産がいくら多くても国債を発行している理由には次のことが考えられます。

① 手をつけられない資産
流動性の高い金融資産がどのくらいあるかが精査できていないのですが次のようなものは対象外です。
<対象外の資産>
・年金の積立金
・不動産 官僚の働く霞ヶ関のビル・山

外貨準備高は約1兆4000億ドル程度もありますが、このほとんどは米国債です。外貨準備高をゼロにするわけにはいかず米国債は売りたくても売らせてもらえない資産といってよいでしょう。
どれだけ流動性が高い資産があるかは精査が必要です。

② 増税体質
財務省の体質として財政悪化したら無駄な歳出を押さえるのではなく、増税することが染み付いているようです。

財政悪化しているとするならば、真っ先に無駄な支出を削減する必要がありますが、これは手付かずだと思います。

いくら資産があっても無駄な支出を削減しないで、国債を発行し増税を続けている状態は国民にとってはジリジリと静かな国家破綻状態に陥っているようなものです。

まとめ

日銀の使命は、物価を安定させること(インフレにしないこと)です。
財務省の使命は、財政を健全に維持すること(赤字を作らないこと)です。

しかし、財務省が財政を健全化させるには増税という思考回路になっているようです。

財務省(大蔵省)は、1980年代の日本のバブルの時に、税収が大きく伸びている時に国債残高を減らすことが使命のはずが、国債残高を増やし続けたことが不思議です。ここから国債発行バブル体質になって今も続いているように見えます。
財務省ホームページより、グラフを転載しました。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a02.htm

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基本的に政府ができる景気対策は3つです。
①金融緩和・量的緩和
②財政投資・公共投資
③減税

2019年10月に消費税率は8%から10%に上昇しました。
景気対策として金融緩和をしながらの増税は、アクセルとブレーキを同時にかけていることになります。

消費税を増税すると、景気悪化し全体の税収が落ちるという大事なことが抜け落ちています。
ここからも増税体質が強いと判断できます。

今後、財政問題に類似するMMT理論(現代貨幣理論)などについても何が正しく、何が間違っているかも取り上げていきたいと思います。

最後に、
国の景気対策などは、ほとんど金融面だけですが、景気対策や財政健全化で一番大切なことは国民一人の生産性、創造性を高めることであり、それは一人ひとりが使命に進むことで実現可能となります。

参考資料

日本銀行法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=409AC0000000089
第二条
日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。

財務省設置法
https://www.kantei.go.jp/jp/cyuo-syocho/990427honbu/zaimu-h.html
第三条
財務省は、健全な財政の確保、適正かつ公平な課税の実現、税関業務の適正な運営、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保並びに造幣事業及び印刷事業の健全な運営を図ることを任務とする。

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プロフィール

松島修

松島修

エフピーネット株式会社 代表取締役 投資助言・代理業 関東財務局長(金商)第1898号、インベストメントアドバイザー、経済コンサルタント、ベストセラー作家

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