公開日 2021年8月19日

中国政府の厳しい規制強化の狙いと今後

中国習近平態勢への評価・見方は的を外したものが多く、根拠のない恐怖感につながったり、世界の敵に断定したりもする。しかし、中国なしの国際経済は有り得ない。党中央の絶対的権力の範中で引き続き、イノベーションの牽引役を担い、成長していくことが求められていくことになろう。
中国政府の厳しい規制強化の狙いと今後

★★★上級者向け記事

党大会に向けた権力基盤強化

中国習近平態勢への評価・見方は、いわゆる民主主義、自由経済社会の立場からのものであり、尺度が全く異なるがゆえ、どうしても的を外したものばかりになる。場合によっては根拠のない恐怖感につながったり、世界の敵に断定したりもする。

しかし、現実にはいまや、中国の存在なしの国際経済は有り得ないし、国・地域によっては必要不可欠な存在になっている。こうした現状をどう止揚していくことができるのか。

7月下旬から一気に浮上した「中国当局による企業への規制強化の嵐」に対する市場の動揺は、その典型的な姿である。

中国の指導者は過去数十年にわたり、マルクス主義や社会主義、労働者階級の美徳をたたえてきた。その一方で高度経済成長を監督し、時価総額で世界最大規模の企業も誕生させた。

習氏は2期目の政権をスタートさせた2017年、中国の主要な問題は、「不均衡かつ不十分」な発展だと指摘し、その解決に多大なエネルギーを注ぐよう党幹部に求めた。

過去1年の民間セクターに対する締め付け強化は、その結果にすぎないのだが、あまりに突然のやり方に多くの市場関係者がとまどいを見せている。

投資家は今や、オンラインゲーム、電子たばこ、不動産、粉ミルクに至るまで、国営メディアが批判の矛先を向けたあらゆる業界の株を手放しつつある。

民間企業への締め付けが5年前や10年前でなく、今起こっている理由を説明するには、特に2つの要因が挙げられるだろう。

1つは、米国とのイデオロギー面での対立が深まる中での自立推進だ。

もう1つは、2022年秋に開かれる5年に一度の共産党大会に向け、習総書記自身が狙う権力基盤の恒久化だ。

3期目を阻む勢力は「反腐敗闘争」による糾弾・処罰によって、ほぼ一掃された中、習氏を抑えることは不可能。締め付けを始めるには絶好の機会なのである。

「大きな企業への締め付けによって息をつけるようになる新興企業が増え、全体的には経済を押し上げる。また、市民の間に不平等を生み出している元凶にも歯止めをかけることで、党への信頼が一段と高まる」ということなのであろう。

景気回復期に規制強化を加速

世界でいち早く新型コロナウィルスの感染抑制に成功した中国では、昨年8月頃から金融正常化とともに、各種構造問題への取り組みを再開した。

その主要ツールである規制強化は、高成長で世界の注目を集めたIT企業が的になったことや、不動産業など広範囲に及んだこと、さらに教育産業の非営利化という極めて厳格な措置も含まれたことなどにより、波紋が広がり一時株式市場でパニック的動きもみられた。

今般の一連の規制強化を振り返り、政府の動向を予測する上で、昨年12月に開催した中央経済工作会議への注目度が足元で高まっている。

同会議の要旨で「窓口期間(景気が良好で政策により景気を下支えする必要性の低い期間)を
有効に利用する」ことが言及されているが、景気が良好であるからこそ規制強化のマイナス面を看過できるとの当局の見方を示唆したと読み取れる。

この見方に基づくと、景気が良好な上半期に駆け足で当局が規制強化に動き出した構図となる。

当局の広範囲に及ぶ数多くの規制強化を俯瞰すると、IT産業への「3本柱」を軸としたルール整備、格差の是正が主要な2つのテーマと考えられる。

IT産業については、2019年までほぼ規制がなかったが、ネット関連企業の巨大化や乱立に伴い、不当競争や過度な利益追求などの問題が顕著となり、社会的不満も高まった。

そのため、2019年末から規制強化の動きが出始め、2020年末から「3本柱」(データの管理・フィンテック・独禁法)を軸とした規制強化が、一気に加速したことが今までの流れとなっている。

中国当局の目指しているIT産業への規制の方向は、

(1)GAFAが世界を牛耳る構造を中国では許さず、中小企業の成長空間を開拓し、中長期的IT産業の健全な発展を目指すこと

(2)ハイテク企業の高い利益率を社会への分配に一部振り向けるなど、利益追求だけでなく社会的責任も果たすこと

(3)消費者と投資家の保護

(4)システミックリスクの抑制

などと考えられる。

消費者と投資家を適切に保護するためには避けて通れない道であり、中長期なネット関連業界の健全な発展のための措置と考えられる。

一方で、足元逆風が強まっている不動産業と教育産業の共通点としては、可処分所得の一段の増加を妨げ、格差の拡大に繋がりかねないことだ。

特に教育産業においては、私立の企業が公立機関から人材などの資源を奪いながら高額の学費を設定したことで、平等な教育機会が与えられない社会になっていることに対して、政府がメスを入れた。

これら産業への規制強化の効果を疑問視する向きもあるが、ある程度、格差の是正・社会安定の維持に寄与すると期待される。

規制強化の進捗度はどうか。

「格差是正」に関して教育や不動産業への規制強化は今後も続く可能性がある一方で、IT産業については「データの管理」を除いて、規制強化の大方が出揃った。アリババやテンセントなどの巨大IT企業に関しても、体制整備など具体的な指示がなされており、企業の対応が一巡しつつある。

残りの「データ管理」に関しては、データの種類や影響が多岐にわたることもあり、法整備などには年越しまで時間がかかるとみられる。

メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より抜粋しています。
(この記事は 2021年8月18日に書かれたものです)

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プロフィール

金森薫

金森薫

国際エコノミスト。元外為・債券・株先ディーラーという実践経験を生かした経済分析、マーケット分析。

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