公開日 2021年1月14日

マイナンバーカード化を急ぐ菅政権

個人情報がマイナンバーカードに集約されると、日本も中国型の「国民管理」になる可能性がある。
マイナンバーカード化を急ぐ菅政権

カード普及工程表

2020年12月11日、首相官邸で「第6回マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ(WG)」が開催された。

出席した菅首相は「行政のデジタル化を実現するため、専門家の皆さんを集めたこのWGでは、長年指摘されてきた課題を33項目に整理し、それらを今後5年間で実現するための取組方針を本日まとめていただいた」とし、「今回取りまとめた工程表に掲げられた個々の課題について、今後設置するデジタル庁を中心に、しっかりと解決していく」とコメントした。

33項目の検討項目は、次の5種に大別されている。

  1. マイナンバーカードの利便性の抜本的向上
  2. 同カードの取得促進
  3. マイナンバー制度の利活用範囲の拡大
  4. 国と地方を通じたデジタル基盤の構築(情報システムの統一・標準化、クラウド活用の促進等)
  5. マイナンバー制度及びデジタル・ガバメントに係る体制の抜本的強化

だが、合計33の検討項目は相当な危険性をはらんでいる。まずマイナンバーの連携検討対象として拳げられているのは、税(所得情報)、社会保障、児童手当、生活保護、学校検診データ、公金受取口座、複数口座の管理・相続情報、ATMによる口座振込(マネロン対策、特殊詐欺対策)情報・運転免許等の各種免許、国家資格、在留カードとの一体化・健康情報、電力使用量、固定資産課税台帳とその他の土地に関する各種台帳情報と実に多岐にわたっている。

さらに個人の認証を目的として、「生体認証などの暗証番号に依存しない認証」が挙げられている。つまり国民の生体認証情報の収集である。利用についても、民間サービス化との積極的な連携や地方自治体による利用、果ては「海外でも利用できるようにする」といった趣旨の文言をみれば、セキュリティとの危険性も感じざるを得ない。

河野規制改革担当大臣は、繰り返し“脱ハンコ”“脱ファックス”を口にして注目を集めているが、そうした手続きが簡素化される、その情報の中身が問題なのである。WGは、こうした検討項目を工程表化した。

  • 2021年3月健康保険証として利用開始
  • 2023年3月までカード機能をスマホに搭載
  • 23年3月末まで全住民へのカード交付を想定
  • 25年3月まで運転免許証とカードの一体化
    預貯金口座の照会制度を導入
  • 26年3月まで外国人在留カードも一体化
    国・地方自治体のシステム統一

個人情報の一元管理化

明白なのは、政府が個人情報の一元的管理を目指しているということである。我々が手にしている主なカードには、マイナンバーカード、銀行カード、健康保険証、運転免許証、クレジットカード、身分証明書、学生証、マイレージカードなどがある。銀行カードにはクレジットカードが附帯され、クレジットカードにはポイントシステムが附帯されている。しかし、それらに具体化されている個人情報はすべて別個のものであり、一元化されてはいない。

だが現在の目録見が実現すれば、別個に集められ、管理されている個人情報がマイナンバーカードに集約されることになる。集められている個人情報に制限はない。政府が集めたいと思う個人情報は、滞りなく集めることができてしまう。

たとえば新しい道路を建設しようとする場合、一番簡単な方法は直線に通すことだが、その予定地に居住する人からクレームが出た場合、交渉で解決の目処が立たなくなることがある。すると、完成までにかかる時間と費用を考えたとき、直線ではなく少し迂回してでも、すんなりと交渉がまとまるであろう方法を検討した方が費用対効果で有効と判断される。道路を造る側にとっては、そこにクレーマーがいるかどうかの判断が重要になる。そのための情報が一つのカードナンバーに集約されていれば、すべてが解決できる。

施政側の「行政のスピード化」という効果だ。しかし、これは事業を推進する立場の考えであり、土地を収用される者の立場は考慮されていない。クレームを申し立てた人には、それ相当の理由があるもので、理不尽な判断が正当化されてしまってはならない。

正当な権利を主張し、交渉で解決していくというのが民主主義国家のイロハであり、行政側の通りやすい選択肢を当初から一方的に決めていく手段としてマイナンバー情報を利用するのは権力国家と同じである。

一枚のカードに乗せられて紐づけられる情報に制限はない。たとえばそのルールを法律上で整備したとしても、法律を変えるか、法解釈を変更すれば意味がなくなる。そこには個人情報を守ろうとのガバナンスは存在しない。

1980年、OECD(経済協力開発機構)は「プライバシー保護に関するガイドライン」を採択した。

個人情報保護法に関するOECD8原則といわれるもの(1)収集制限の原則(2)データ内容の原則(3)目的明確化の原則(4)利用制限の原則(5)安全確保の原則(6)公開の原則(7)個人参加の原則(8)責任の原則である。

これらのうち、特に大切なのが、(4)利用制限の原則である。それは、「収集した個人情報は明確化された目的以外に使用しない」ことを示している。個人情報は、本人の同意のもとで、利用目的に沿った方法で、目的を明らかにしたうえでの収集しか認められていない。

利用目的以外の利用は絶対に許されない。また、他の情報との結合も絶対に許されるべきものではない。しかしながら、マイナンバーカードという情報の一元化は施政側にすれば、これほど美味しいものはないわけで、正直なところ、OECD8原則なんぞ画餅にすぎまい。

公安的個人認証を狙う

WGでは、個人認証の方法として、「生体認証などの暗証番号に依存しない認証の仕組みの検討」が提唱されている。これは、パスワードなど本人の主観的要因による情報以外による認証、という意味で特に政府は主体認証を中心に検討しているという。

生体認証には、指紋をはじめ、様々な方法が存在する。主なものとしては顔認証、虹彩認証、静脈認証、掌紋認証、声紋認証、耳形認証がある。特に個人の顔の特徴を認識して本人を特定する顔認証は指紋認証に四敵する認証方式であろう。

マイナンバーカード先進国たる韓国では、国民全員に付与される固有番号である住民登録番号制度が使われている。この住民登録番号がなければ何も生活できない。住民票や印鑑証明の取得はもちろん、納税申告、社会保険加入、銀行口座開設、クレジットカード申請、スマホ契約、ネットサービスの会員登録など、ほぼ全ての生活シーンにおいて、この番号は必要となる。

されに、現行の住民登録及び住民登録証制度によれば、すべての国民は16歳になると自身のあらゆる指紋を国に提供しなければならず、右手親指指紋は住民登録証の必須記録事項となっていて、住民登録票の作成過程で十指すべての指紋が採取されて保管されることになっている。

ところが、この指紋登録制度は法律に基づくものではない。慣習が義務化したとしか言いようがない。なのに指紋を国に提供しなければならないということは、法的な根拠のないままに個人が国家に管理されていることにほかならない。

これに対して、法律で指紋の登録を義務付けているのが中国。2011年に改正された法律で、「公民は住民身分証の所得、更新、再発行の申請をする場合には、指紋データを登録しなければならない」と規定し、指紋登録を義務付けしている。

この住民身分証法を管轄するのは公安機関。中国では治安維持の観点から住民管理が行われているということだ。この身分証がなければ、国内外への移動、婚姻、住所変更など個人の基本的権利が認められず、完全な国家管理下にある。

このまま、日本でもマイカード化が行き渡っていくと、この中国型の「国民管理」になるだろう。菅政権が目指しているのが、この姿なのであろう。

国家による個人管理へ

総務省の調査によると、マイナンバーカード普及率(人口に対する交付率)は、2020年春にコロナ対策の特別給付金申請に使えるという「促進キャンペーン」で相当数の増加があったも、それでも20年6月1日時点で約17%と低迷している。そこで政府は、このカードの「6つのメリット」宣伝を始めた。

  • マイナンバーの証明書になる
  • 公的な本人確認書類になる
  • コンビニで各種証明書が取得可能
  • 行政手続をオンラインで申請
  • オンラインでの口座開設に利用できる
  • 健康保険証として利用できる

というメリットだ。

さらに、20年9月から始められた「マイナポイント制度」は、事業に登録されたキャシュレス決済サービスを選択してヒモ付けることで、利用金額に応じて選択したサービスのポイントが付与される仕組みである。このマイナポイント制度の最大の特徴は高いポイント付与率(いつでも25%)だ。

たとえば2万円の買い物をした場合、上限5千円分のポイントが付与される計算となる。要するにマイナンバーカード持てば、金銭的にもお得、といるカード化促進作戦。しかし、その財源は税金である。

税金を使ったカード化狙いであり、且つ国に膨大な個人消費情報を集積させることができ、政策立案に利用しつつ、業界との情報共有で天下りや新たな天下り先の第三セクターなどを増やすという政官財の見事な利益誘導も透けて見える。

実は2018年から、口座開設する時に任意ながら金融機関にマイナンバーを提供するよう定められたが、番号の使用目的として税務調査や生活保護などの資力調査が規定されている。

著者が以前から警告を発していることだが、国は1千4百兆円超の負債(国債残高が中心)を抱え、しかも税収が不足している。国民の資産課税強化の一環として、保有資産額をベースに社会福祉・医療支援額を差別化していく流れは必至なのである。

収入ではなく資産の大小で負担額を決めていく訳である。もちろん、国税査察官の微税効果は大きく向上することになろう。

メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より抜粋しています。
(この記事は 2021年1月11日に書かれたものです)

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プロフィール

金森薫

金森薫

国際エコノミスト。元外為・債券・株先ディーラーという実践経験を生かした経済分析、マーケット分析。

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