公開日 2025年2月26日

国際社会で存在感を増す湾岸アラブ産油国

UAE、カタール、サウジの3カ国の動向を紹介した上で、これらの国にエネルギー資源を大きく依存している日本の対湾岸アラブ産油国政策について考察する。
国際社会で存在感を増す湾岸アラブ産油国

2月中旬、湾岸アラブ産油国のサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールが世界的な注目を浴びた。

UAE

UAEについては、2月17日にアブダビで開幕した国際防衛産業展示会(IDEX)および海軍防衛・海洋安全保障展示会(NAVDEX)が開幕し、多くの軍人・軍事産業分野の関係者が集まった。

カタール

カタールについては、18日、タミム首長がインドを訪問しモディ首相と会談し、今後5年間で、年間貿易額を280億ドルに拡大すること、カタールがインドのテクノロジーなどに100億ドルの投資を行うことで合意したことが、液化天然ガス(LNG)市場関係者らの関心を集めた。

サウジアラビア

そして、サウジアラビアについては、20日に米国のフロリダ州マイアミに投資事務所を開設したことが注目されている。

事務所開設に合わせてマイアミビーチで開かれた「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ・インスティテュート」の会議では、参加した投資家や政策立案者を前に、トランプ大統領が公私にわたるサウジとの関係の深さを語った。

このように、産油国であるUAE、カタール、サウジは、脱炭素社会を目指して石油部門以外の分野に注力して経済力を高めている。

一方で、この3カ国は最近、政治的にも国際社会で注目される貢献を行っている。

そこで、以下では、3カ国の動向を紹介した上で、これらの国にエネルギー資源を大きく依存している日本の対湾岸アラブ産油国政策について考察する。

UAEを訪問したウクライナのゼレンスキー大統領

2月17日、ウクライナのゼレンスキー大統領がUAEを訪問してムハンマド大統領と会談し、二国間関係に加え、ウクライナ戦争について協議を行った。

二国間関係では、包括的経済連携協定(CEPA)が締結され、同行していたウクライナのスビリデンコ第1首相は、この協定で2031年までにウクライナのGDPが8億7400万ドル、UAEのGDPが3億6900万ドル増加すると発表した。

今回のゼレンスキー大統領のUAE訪問は、2月11日に米国とロシアの両首脳が電話会談し、ウクライナ抜きの和平交渉が進む中で実施された。

UAEは、ウクライナ・ロシア間の捕虜交換の仲介役として実績があり、両国から信頼を得ているが、状況からみて、捕虜交換の継続のみが議題だったわけではないだろう。

サウジアラビアとトランプ政権との関係の深化

ゼレンスキー、ムハンマド両大統領の会談の翌18日、サウジのリヤドで、ファイサル外相の立会いのもと、米国とロシアの高官協議が実施された。

この協議に先駆け、米国・ロシア間では関係改善の動きがあり、ロシアは2021年および2024年に大麻所持容疑で逮捕した米国人拘束者を解放した。この解放交渉の米国側の担当者はウィトコフ大統領顧問(中東特使)である。

一方、ロシア側は政府系ファンド「ロシア直接投資基金」(RDIF)のキリル・ドミトリエフ総裁が、同国の政府担当者に橋渡しをしたと報じられている。同氏は、サウジのムハンマド皇太子やトランプ大統領の娘婿クシュナー氏とのパイプを有しており、ロシアとサウジ関係の構築に尽力した人物である。

また、同氏はスタンフォード大学とハーバード大学で学び、ゴールドマン・サックス、マッキンゼーで勤務した経験がある。

2月11日夜、トランプ大統領は、ウィトコフ氏がモスクワに渡って連れ帰ってきた1人目の人物マーク・フォーゲル氏(歴史教師)と面会し、記者団に対し、解放は「公平で合理的な交渉だった」と述べ、解放の流れが「ウクライナ戦争終結への可能性を生んだ」と語っている。

ウィトコフ氏は記者に、「キリルという紳士がロシアにいる・重要な米国・ロシアの橋渡し役だ」と述べており、中東人脈と米国人脈を持つドミトリエフRDIF総裁が、米ロの関係改善とウクライナ戦争の停戦交渉に向けてのキーマンであることが示された。

米ロ間では、2月11日のトランプ大統領とプーチン大統領の電話会談、15日のルビオ国務長官とラブロフ外相との電話会談、17日のロシアによる米国人カロブ・バイヤーズ・ウェイン氏の解放を経て、18日の高官協議へと順調に事が進んだ。

このリヤドでの18日の協議では、
(1)外交官の活動制限の緩和、
(2)エネルギー、宇宙分野での関係再構築、
(3)経済制裁緩和への協議継続が合意されている。

そして、サウジのムハンマド皇太子は、このような米ロの関係改善の舞台を提供することで、ウクライナ戦争の停戦交渉を導くという国際貢献に尽力するイメージを演出した。

同皇太子は、イスタンブールのサウジ総領事館でのカショギ記者暗殺やイエメンへの空爆で多数の民間人殺害を承認したとCIA報告書で指摘されており、こうした悪評を払拭する意図もあると考えられる。

また、それは、サウジが米国内にワシントンに次ぐ2つ目の投資事務所をマイアミに開設するための船出の合図でもあった。

米国のCBSニュースは、トランプ大統領が演説した2月20日のマイアミでの「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ・インスティテュート」の会議には、イーロンマスクし、クシュナー氏、サウジの駐米大使のサウド王女、ジャダーン財務相、ハリファ投資相などが出席していたと報じている。

ムハンマド皇太子は、1月のトランプ大統領の就任直後、同大統領との電話会談で、今後4年間で米国に6000億ドルを投資すると述べており、政治、経済の両面でトランプ政権との関係強化を進めているといえるだろう。

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全文を読みたい方は「イーグルフライ」をご覧ください。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
(この記事は2025年2月23日に書かれたものです)

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プロフィール

水口章

水口章

外務省主管財団法人中東調査会上席研究員などを経て、敬愛大学国際学部教授。同大学総合地域研究所所長。法務省難民審査参与員。 湾岸戦争、米国同時多発テロ、イラク戦争、「イスラム国」(IS)問題など、中東地域関連問題についてマスメディアで解説してきた。

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