公開日 2024年12月27日

2025年の中東地域の注目点

イスラエルとハマス等の武装パレスチナ組織の間の戦闘を止めることができないまま、2024年の終わりを向かえようとしている。2025年には、この行き詰まり状態が変化するだろうか。
2025年の中東地域の注目点

パレスチナ自治地域のヨルダン川西岸地区の町ベツレヘムの降誕教会で、クリスマスミサが行われ、ガザ地区のキリスト教教会でも「攻撃の終了と平和の回復」が祈られた。

前年の10月7日以来継続しているイスラエルとハマス等の武装パレスチナ組織の間の戦闘を止めることができないまま、2024年の終わりを向かえようとしている。

この紛争でのガザ地区のパレスチナ人の死者数は、4万5317人(12月24日時点、ガザ保健当局発表)に上っており、その半数以上が子ども、女性、高齢者とされる。

また、2023年4月から内戦が続くスーダンでは、今年11月までに15万人が死亡し、800万人近くの国内避難民が出ているが、やはり停戦の見通しは立っていない。

この2つの紛争における人道危機への緊急支援は急務であり、停戦の実現は国際社会の最優先事項だといえる。

しかし、こうした国際的な人道危機への対処や紛争解決のために国連、国際機関は十分に機能せず、率先して取り組もうとする国や人物も見当たらない。

2025年には、この行き詰まり状態が変化するだろうか。変化を起こせるとすれば、やはり超大国である米国ということになるだろう。

2025年の米国の中東外交の特徴

1月に大統領に就任するトランプ氏は、議会は上下院とも共和党が過半数を超えるトリプルレッドが実現する中、減税や移民政策など自身の選挙公約を政策に反映しやすい環境にある。

トランプ氏は、対外政策では、米国の国益や自身のビジネスに関係しない問題にはあまり関与しないと考えられる。したがって、安全保障、エネルギー、貿易・投資以外の分野については、指名した閣僚や大きく入れ替えるとされる官僚に政策立案を委ねるのではないだろうか。

そこで、トランプ次期政権で中東地域に関係する要職に就く予定の人物をみていくと、国務長官候補であるマイク・ルビオ上院議員、大統領補佐官(安全保障問題担当)にはマイク・ウォルツ下院議員、CIA長官にはジョン・ラドクリフ元国家情報長官、駐イスラエル大使にはマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事、中東問題担当特使にはスティーブン・ウィトコフ氏(実業家)、その上級顧問としてマスアド・ブーロス氏(実業家)などがいる。

これらの人物の経歴や発言からすると、人道問題に関する識者はいないようである。また、北アフリカ地域に関わってきた人物も見当たらない。

このメンバーの特徴は、親イスラエル、反イランの心情を有する傾向がある人物が多く含まれているということだ。そのことから、トランプ次期政権の中東政策が何に重きを置くかが推察できる。

トランプ次期大統領の安全保障政策

トランプ次期大統領の関心事の1つである安全保障分野では、米国と海外の米国の権益へのテロの脅威の削減が第1の目標といえる。

しかし、これについては、現在、主要な国際テロ組織の「イスラム国」(IS)とアルカイダの主な活動地域がアフリカと西アジア地域であることと、ファイブ・アイの諜報活動による情報の共有で対策はとられていると考えられる。

したがって、同大統領が注力するのは、シーレーン防衛(紅海、ペルシャ湾)だと考えられる。この海域では、減少傾向にあるとはいえ現在もイエメンのフーシ派による船舶への攻撃が見られるなどリスクが存在している。

ただし、米国が直接防衛するというよりも、湾岸アラブ産油国への武器輸出を促進することに努めるのではないだろうか。そこには、米国の軍事費を減らすという目的のほかに、オイルマネーの米国への還流というもうひとつの目的がある。

トランプ大統領は、ウクライナ戦争を終わらせると明言しており、ウクライナ戦争後も米国の軍事産業を支える上でも重要な政策といえる。

トランプ次期大統領のエネルギー政策

トランプ氏の関税引き上げ政策では、国内の物価上昇が予想されるため、国内に安価な運送燃料・光熱燃料を提供する必要が出てくる。

そのこともあり、エネルギー分野について、トランプ氏はシェール・オイル、シェール・ガスの増産・輸出拡大を推進しようとしている。

米国がエネルギー輸出を拡大すれば、国際的なエネルギー市場の需給バランスは崩れる蓋然性が高い。

トランプ氏は、12月20日、EUに対し、米国産の石油・天然ガスの購入を大幅に増やし、対米貿易黒字に対応するよう要求したことに見るように、関税引き上げをカードに、その他の国にも同様の要求を突きつける可能性がある。

この要求を受け、既存の輸入先や購入方法を変更する国も出てくるだろう。そのしわ寄せは、サウジアラビアとロシアが中心となり原油の減産調整を行い、価格を下支えしているOPECプラスの国々に及ぶと考えられる。

12月19日に中国の国有石油大手の「中国石油化工集団」が同国の国内の石油消費量は2027年にピークに達するとの見通しを発表しており、需要が縮小する方向が見える中、トランプ次期政権の政策がエネルギー供給量を増やすことで、市場価格は下方傾向になると考えられる。

財政赤字を抱えながら減産を続けているサウジアラビアなどの国々にとって、トランプ氏のエネルギー政策は難題といえる。

湾岸アラブ産油国は、こうした難題を生じさせるトランプ次期政権と、第1期と同様の親米路線を取り続けるだろうか。

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全文を読みたい方は「イーグルフライ」をご覧ください。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
(この記事は2024年12月27日に書かれたものです)

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プロフィール

水口章

水口章

外務省主管財団法人中東調査会上席研究員などを経て、敬愛大学国際学部教授。同大学総合地域研究所所長。法務省難民審査参与員。 湾岸戦争、米国同時多発テロ、イラク戦争、「イスラム国」(IS)問題など、中東地域関連問題についてマスメディアで解説してきた。

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