公開日 2024年5月23日

依然としてドル高が続く背景

インフレに関する懸念は払拭が難しい。賃金を反映する度合いが大きいスーパーコアCPIの上昇が強いことである。直近4月データでも3月比で上昇した。
依然としてドル高が続く背景

米国のサービス部門は景気過熱

米国のインフレ率がなかなかFRBの想定通りに鈍化の推移を示さないのは、米国のGDP成長率のサービス分野のシェアが上昇し、且つ堅調さを維持していることにある。

米国の1-3月期の実質GDPは前期比年率+1.6%と、昨年10-12月期の+3.4%や、米議会予算局が+2.2%程度と推計する潜在GDP成長率を下回った。

一方、GDP価格指数(名目GDPを実質GDPで割り、物価動向を計ったもの)は+3.1%と前期の+1.6%を上回った。

米国経済は全体的に見ればスタグフレーション(物価高下での景気鈍化)の様相が、やや強くなったとも解釈できるが、何せ、「景気低迷」への予測が多かっただけに、「物価高でも堅調じゃないか!」との評価の方が多い。

しかし、GDPを財、構成物、サービスの生産に分けると、財の実質GDPは1-3月期には同▼2.4%と、昨年1-3月期以来のマイナス成長となった。

また、財のGDP価格上昇率はほぼゼロと、前期の▼1.4%に続いて弱い動きになった。2022年前半には物価の大幅上昇を受けて財の実質GDPは2四半期連続で減少していたことがある。

足元の状況は当時とは違い、財の生産と物価の両面で弱さが見え、財部門の景気後退色がより強くなっている。

一方、サービス分野の実質GDPは1-3月期には+3.0%と前期の+2.8%を上回った。さらにサービス分野GDP価格は+5.1%と、前期の+3.1%から大きく上昇し、2022年10-12月期以来の高い上昇率となった。

財生産と同様に2022年1-3月期には物価上昇に伴って、サービス分野の実質GDPは▼0.6%と若干減少していたが、その後、平均で年率+2.6%と堅調な成長を維持し、サービス分野GDP価格が足元で再加速している。

こうした点では、サービスの景気は過熱化していると言える。サービス生産はGDPの約60%を占め、個人消費支出に占めるサービス支出の比率は約67%に上る。

インフレ率をFRBが目標とする2%へと下げるには、サービス部門の景気過熱を抑えるために追加利上げを行うことが必要になると、主張するFRB高官やFOMCメンバーが何人か出ているのも無理もない。

ただ、財の需要は耐久財を中心にサービスより利上げの影響を受けやすく、利上げをすれば財の景気後退が深まることになろう。

また経済のサービス化につれ、財や構成物の生産がGDPに占める比率は、長期的に下落傾向にある。財のGDPシェアは2019年の約30%からコロナ禍をきっかけに上昇し、2022年後半には32%近くまで上昇した。

しかし、経済の正常化に伴って低下に転じ、直近では31%を切った。追加利上げが無くても、財のGDPシェアは、今後も低下傾向が続くことが予想される。

財生産のGDPシェアはサービス生産の半分程度だが、サービスよりも景気変動に敏感に反応する傾向がある。

FRBとしてもサービス部門が過熱化しているからと言っても、財部門の動向を無視して金融を引き締めるわけにはいかないであろう。

FRBは当面、金融政策の変更を見送り、財部門の景気後退がサービス部門へと波及して、インフレ圧力が徐々に沈静化するのを待つしかあるまい。

足元でのサービス部門の景気の強さから見て、米国経済全体としてはすぐに景気後退に入りそうにはない。

ただ、当面、経済成長率は潜在成長率よりも低めに留まる一方、GDP価格指数や個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)などのインフレ率の指標は、年率3%を上回り、スタグフレーション気味の様相が執拗に続くリスクはある。

4月のサービス部門CPI動向

5月15日発表の米4月CPIを市場は「鈍化となったゆえ、9月の利下げ開始の可能性が高まった」と、評してはいるが、米ドルの実効レート(DXY)の反応はわずか1日でしかなく、円の相対的弱さは直近の20日も目立っている。

ドル円も156円台まで戻ってしまった。総合CPIは前月比+0.3%、前年比+3.4%と概ね市場予想通りに減速。

ガソリン価格上昇に伴い、エネルギーが前月比+1.1%、前年比+2.6%に上昇加速した一方、食料は前月比横ばい、前年比+2.2%と落ち着いた推移となった。

もっとも、5月入り以降の原油価格先物の下落を踏まえると、先行きのCPIエネルギーは低下が見込まれる。

コアCPIは前月比+0.3%、前年比+3.6%だった。インフレの瞬間風速を示す前月比伸び率の年率換算値は+3.6%となり、3月の+4.4%から明確に減速。

3ヵ月前比年率では+4.1%、その3ヵ月平均値は+4.3%と落ち着きの気配がみられる。コアCPIの基調を決める労働コストの伸びが鈍化したことで、賃金由来のインフレ圧力が後退している様子が見えている。

さて、そこでコアCPIを「財」と「サービス」に分解すると、コア財は前月比▼0.1%と2ヵ月連続のマイナス。

中古車価格の落ち着きなどを背景に前年比では▼1.3%とマイナス幅を拡大し、コロナ禍前より下回る伸び率となった。コアサービスCPIは前月比+0.4%、前年比+5.3%へと伸び率が鈍化。前年比上昇率は3月比で0.05%ポイントの伸び率縮小であった。

今回、最大の注目点であった家賃を除くコアサービス、いわゆるスーパーコアサービスは前年比+4.85%と高止まりとなった。

もっとも、これはベースエフェクト(比較対象となる前年の値が低いことで、伸び率が高めに出る)によるところが大きく、瞬間風速的には衰えている。

前月比では+0.42%と3月の+0.65%から減速していて、この点を重視すればインフレ圧力は緩和していると言える。

なおスーパーコアは、自動車価格や修理費などに対して、遅行性のある自動車保険料の急上昇によって押し上げられている。

そのため「基調的な物価」を捉えているかは難しい判断だ。

そもそもFRBがスーパーコアCPIを重視しているのは、労働コストの増加がサービス物価にどれ位波及しているかを計測することが目的である。

自動車保険料の上昇によって押し上げられている足下のスーパーコア(特に前年比)は、そうした指標として有用性を失いつつあるように思える。

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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2024/5/22の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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金森薫

金森薫

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