公開日 2024年1月31日

紛争の火薬庫に火がつくか

ゴールドマン・サックスは、紅海のチョークポイントであるバブ・エル・マンデブ海峡(狭いところで幅30km)の自由航行がイエメンの反政府勢力フーシ派により疎外されている上に、ペルシャ湾のチョークポイントであるホルムズ海峡が封鎖される状況を想定している。仮にそうなると、短期的には、天然ガス、原油ともに価格が上昇するというシナリオである。その可能性について、考察する。
紛争の火薬庫に火がつくか

世界経済フォーラム(WEF)のダボス会議に参加していた大手資源商社ガンボー・グループのトルンクビスト最高経営責任者(CEO)は、1月16日、ロイター通信のインタビューに応じ、原油相場について、イエメンのフーシ派の紅海・アラビア海での軍事行動は原油生産に重大な悪影響を与えてはいないとした上で、1バレル当たり70ドルから80ドルの間で推移すると述べ、短期的には「供給過多」だと指摘した。

一方、天然ガスについては、「ガス輸出国フォーラム」(GECF)のハメル事務局長が、1月22日、世界の液化天然ガス(LNG)市場は2026年まで需給はひっ迫する状態が続くとの見通しを示した。

また、1月26日、バイデン米大統領が、自国との自由貿易協定を締結していない国へのLNGの新規輸出認可を一時停止すると発表したことで、価格動向を注視する必要性が生まれている。

このような現在のエネルギーの情勢において、気になる報道がある。

1月15日、ロイター通信が、ゴールドマン・サックスのアナリストのリポートからとして、ホルムズ海峡が寸断されれば最初の1カ月で原油価格は20%上昇するという記事である。

トルングビストCEOが述べているように、原油生産に関して不安材料はない。むしろ、中国、ヨーロッパ諸国などの景気見通しが悪く、需要不足が懸念されている。

ただ、ゴールドマン・サックスは、紅海のチョークポイントであるバブ・エル・マンデブ海峡(狭いところで幅30km)の自由航行がイエメンの反政府勢力フーシ派により疎外されている上に、ペルシャ湾のチョークポイントであるホルムズ海峡が封鎖される状況を想定している。

仮にそうなると、短期的には、天然ガス、原油ともに価格が上昇するというシナリオである。

以下では、その可能性について、考察する。

イランへの攻撃を提唱する米国議会内の強硬派

米国とイギリスは、1月11日にイエメンのフーシ派関連施設への攻撃を開始した。

この攻撃は、フーシ派が2023年10月後半から、イスラエルによるパレスチナのガザ地区への攻撃に対する報復として、紅海を航行するイスラエル関連船舶の拿捕や攻撃を行っていることへの警告的なものであった。

この米英の攻撃に対し、オマーンのバドル外相は、両国の空爆は「われわれの助言に反しており、極めて危険な状況に火を注ぐことになる」と警鐘を鳴らした。

また、イラク外務省も、攻撃の拡大は「事態の解決にはつながらない」と懸念を表明した。さらに、イエメン内戦の終結に向けて、フーシ派と和平協議を進めているサウジアラビアも懸念を示した。

そして、フーシ派と関係が深いイランは、1月12日、空爆は「イエメンの主権と領土の一体性に対する明らかな侵害であり、同時に国際法違反だ」と強く非難した。

このように、中東諸国やロシアから、軍事力による問題解決の動きは中東地域での紛争拡大につながると危惧する声が上がっているが、事態は深刻化している。

フーシ派によるイスラエル、アメリカ、イギリス関連船舶を中心とするミサイル・無人機による攻撃は継続され、米英も、フーシ派の拠点への空爆やイエメン海域での船舶の臨検を続けており、紅海の安全航行を確保できない状況となっている。

その中、米国内では、親イランの非国家組織(ハマス、レバノンのヒズボラ、フーシ派など)に武力行使を行うよりも、それらを支援するイランに対する軍事行動を検討すべきとの声が強まっている。

米議会の共和党議員から強硬な発言は、ネタニヤフ政権のガザ地区への武力行使に対する批判の矛先を変えようとしているかのようにも見える。

米国は自衛権の行使をどこまで拡大するか

米英のイエメン空爆に関しては、ロシアの要請で、1月12日に国連安保理の緊急会議が開催され、協議が行われた。その際、米英両国は、武力行使について「自衛権の行使」を理由に挙げて説明した。

これは、国連加盟国に武力行使や威嚇を原則禁じる「国連憲章第2条」を踏みにじるものといえる。

その後の1月28日、ヨルダン北東部でシリアとの国境付近の基地(タワー22)に駐留する米軍(350人)に対し無人機による攻撃が行われ、米兵3人が死亡、34人が負傷する事件が起きた。

この攻撃について、同日、「イラクのイスラム抵抗運動」(IRI)が
SNS「テレグラム」に犯行声明を投稿した。声明では、イラクにおける米軍の占領への抵抗とイスラエルによるガザ地区住民の虐殺への対抗が主張されている。

バイデン大統領は、この攻撃は、「イランの支援を受ける過激派武装グループ」によるものだと述べ、「報復する」と宣言し、「米国が選ぶ時期と方法で、全ての責任者に責任を取らせる」と表明した。

一方、イランは、1月29日、イラン国営通信を通じて声明文を発表し、「米軍基地への攻撃とは何の関係もない」と関与を否定した。

では、11月に大統領選挙を控えたバイデン政権は、どこまで自衛権を行使する武力行動がとれるだろうか。3つのシナリオを想定する。

第1のシナリオは ・・・

全文を読みたい方はイーグルフライをご覧ください。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
(この記事は2024年1月30日に書かれたものです)

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プロフィール

水口章

水口章

外務省主管財団法人中東調査会上席研究員などを経て、敬愛大学国際学部教授。同大学総合地域研究所所長。法務省難民審査参与員。 湾岸戦争、米国同時多発テロ、イラク戦争、「イスラム国」(IS)問題など、中東地域関連問題についてマスメディアで解説してきた。

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