公開日 2023年10月19日

米ドルとユーロ通貨の盲点とは

近い将来、株価が大きく低下する中、長期国債利回りも経済の実態を反映して低下する、という展開を想定するのが自然ではないか。もう少し先には、米国経済の減速の兆候を確認することや銀行不安の再燃などをきっかけに、行き過ぎた長期国債利回りと行き過ぎたドル高が同時に大きく調整され、株価も下落する、という展開が予想できる。
米ドルとユーロ通貨の盲点とは

米国10年債利回りは高すぎる

米国債利回りが想定以上のレベルを続けていて、これが結局のところ、米ドルの強さにつながっている。

となれば、一体、いつまでこの状態が続くのかがポイントとなるわけだが、なかなか予測通りとはならない。

10月6日には米10年債利回りは4.88%まで上昇し、5%目前に迫った。13日は4.61%とやや下げたが、これでも歴史的水準であることに変わりない。

7月以降、米国10年債利回りは、ほぼ一直線に1%ポイント程度上昇してきた。

これとほぼ連動して生じているのがドル高。7月当初のDXY(ドルの実効水準)は102.94ポイントだったが、現在は、106ポイント台半ばと、大きく上昇している。

日本では円安の進行を促し、物価高を助長することで政府を苦しめ、日銀の利回りコントロールを難しくさせている。さらには米国の株価下落トレンドを受け、日本の株式市場も逆風に見舞われている。

昨年のドル独歩高は、FRBの急速な利上げ、それに伴う長期国債利回りの大幅上昇が引き起こしたものだ。現在でもなお利上げ局面は続いているが、利上げが最終局面にあるとの見方は既に強いコンセンサスとなっている。

したがって、政策金利であるFF金利の先物市場では、年内のFF金利は5%台半ばを頂点にしたあと、来年半ば以降、ゆっくりと低下していくとの見方を織り込んでいる。

つまり、利上げは終わりが近づいても、FRBは容易には本格緩和に踏み切らないとの見方から、長期債利回りの上昇にピリオドが打たれないまま推移している、という基本構図なのである。

それにしても、ドル高がここまで執拗に進行しているのは意外である。その背景には、為替に影響を与えやすい実質利回りが上昇している点を指摘する向きが多い。

インフレ率が着実に低下を続ける中、短期のインフレ期待も低下トレンドにあり、名目短期金利から短期のインフレ期待値を差し引いた「実質短期金利」が、上昇を続いているのは事実である。

また、インフレ連動債に織り込まれた10年先のインフレ期待は、2.2%~2.4%程度で安定を維持してきた。

そのもとで7月以降、10年国債利回りが1%ポイントも上昇していることは、実質長期金利が同幅で上昇していることを意味している。

これこそが予想外の執拗なドル高の背景というわけである。

しかし、留意しておきたいのは、やはり実質利回りの上昇はドルを強くする一方で、米国経済には逆風になるということである。

米国経済に減速感が広まれば、長期国債利回りは低下、ドル高の企業競争力への悪影響の懸念も加わって株価も下落し、ドルもさすがにUターンを始めるであろう。

今はそうした大きな流れの転換期に近いのではなかろうか。
とにかく「5%」に近づく米国の10年債利回りには個人的にも強い違和感がある。

既に述べたように、物価安定回復に向けたFRBの強い姿勢を反映して、10年先の期待インフレ率は安定を維持している。FRBはビハインドザカーブ(政策の出遅れ)に陥っている訳ではないはずだ。

つまり足下での10年国債利回りの上昇は、インフレ期待の上昇によるものではなく、実質利回りの上昇によるものとしか言い様がない。

実質利回りを押し上げる要因として、債務上限問題以降の国債発行増加という需給悪化要因や、政府機関閉鎖問題(次は11月17日に予算期間終了)や下院議長解任を受けた先行きの政府・議会の財政ガバナンスの欠如などへの不安、さらには国債の信任低下も考えられる。

しかし、そうした財政要因、需給要因によって上昇する10年債利回りが、強いドル高を誘発するだろうか。国債の信任低下は通貨価値への信任低下と連動するのが普通だ。

だが実際はそうなっていない。となれば実質利回りの上昇は、潜在成長率(理論的成長率)の上昇を反映しているという解釈になる。

10年国債利回りは実質で+2.4%程度である。

潜在成長率がこの水準にあるとすると、米国の成長力が従来と比べて、かなり高くなったことを意味するが、それを示す証拠はないだろう。

仮にそうであれば、株価が相当上昇してよいはずだ。いずれにせよ、10年国債の現在の水準はやはり不可解ということになる。

10年国債利回りが5%(に近い)ということは、政策金利の向こう10年の平均値の予測値が、5%を大きく下回ってはいないということを意味する。他方でFRBが示しているFF金利の長期水準は2.5%程度であり、この水準との間に相当の乖離があり、やはり不可解なり。

このように、10年債利回りが5%近くにあることにはかなり違和感がある。さらに、債券、株式、為替の動きがそれぞれにちぐはぐであり、全体を論理的、整合的に説明することは難しい。

こうした状況のもとでは、しばしば大きな変動をきっかけに、金融市場は正常な姿を取り戻していくものではないか?

・・・

続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2023/10/19の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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金森薫

金森薫

国際エコノミスト。元外為・債券・株先ディーラーという実践経験を生かした経済分析、マーケット分析。

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