公開日 2023年10月3日

2024年問題の重要度

日本の社会は非効率な物流をベースに便利で効率的な仕事と、暮らしを追求してきたのである。 この構造がガラリと一変する初年が2024年に始まる。「2024年問題」とは、それほど重大な改革を意味している。
2024年問題の重要度

我々は日々、コンビニで飲み物やおにぎりを、スーパーで野菜や総菜を買う。ドラッグストアで日用品を、ネット通販で本を購入する。こうした生活を支えているのが物流である。

飲料や野菜は、生産された場所からコンビニやスーパーに運ばれてこなければならない。ネットで注文した商品は梱包され、トラックに積まれ、自宅まで届けられなければならない。

商品の運搬、梱包、保管、荷役(荷積み・荷卸、仕分け)などの機能を合わせて物流と呼ぶ。

日本では、トン(t)ベースでみると、貨物の9割がトラックによって運ばれている。つまり、我々の生活は、トラック輸送のうえに成り立っている。

しかし、それを意識することは少ない。

スーパーで野菜を手に取り、生産者の顔写真をみて、産地に思いを馳せることはあっても、運んできたドライバーの姿を思い浮かべることはほぼない。

それゆえ、物流は「経済活動の黒子」と称されてきた。トラック輸送は、トラックドライバーによって担われる。しかし、今、ドライバーはなり手が少なく、高齢化が進行している。

2023年1月の「自動車運転の職業」の有効求人倍率は2.57と、一人のドライバーを2.6社以上が奪い合う構図にある。むろん人口現象を背景に、人手不足は今や社会全体の問題である。

だが、同年月の全職業平均の有効求人倍率は1.27であり、この業界の人手不足が極めて深刻であることがわかる。

ドライバーの平均年齢は、大型トラック49.9歳、中小型トラック47.4歳であり、全労働者平均の43.4歳よりも4~6歳高い。

なぜ人手不足に陥ったのか

トラック業界で人手不足が起きた要因を考えるには、1980年まで遡る必要がある。

この業界の事業者数は、1990年を境に急増している。そのきっかけは、参入規制と運賃規制の緩和をもたらした物流二法の施行にあった。

規制緩和により、それ以前の3~4倍の事業者が、毎年市場に参入してくるようになった。

2010年頃からは、退出事業者数も急速に増加していくが、事業者数は1990年に4万72社だったのが、2007年には6万3122社まで増えた。2008年にわずかに減少に転じたものの、その後はほぼ横ばいで推移している。

つまり事業者数は規制緩和後の約15年間で1.5倍に増え、その水準のまま現在に至っている。

他方で、物流二法が施行された数年後に、バブルが崩壊した。

国内の貨物輸送量は1991年をピークに、その後若干の上下はあるものの、逓減傾向を示すようになる。国内貨物の輸送トン数の推移をみると、2015年は約7割にまで落ち込んでいる。

すなわち、もはや市場は拡大しなくなったにもかかわらず、事業者数が急増した結果、トラック業界は一気に供給過多の状態に陥った。

こうした状況が、運賃の低下を生み出すことは必然である。

輸送量(トンキロ)当たり売上高は、1990年に81年だったが、バブル崩壊からしばらく経つと下降し始め、2001年には59円まで下がった。

低賃金・長時間労働の典型

運賃の低下はドライバーの賃金低下をもたらした。

多くの運送会社が下がった運賃に対応するために自社の利益を削り、従業員の給与を引き下げたためである。

ドライバーの賃金が比較的高かった1992年の水準を1とすると、賃金水準は1990年代後半から、下降し始め、2000年に0.94、リーマンショック後の2009年には0.81まで下がった。

同じ時期に男性平均の年収も緩やかに下降しており、高卒男性のそれも2000年代に下落した。

だが、ドライバーの年収はそれらをも上回る下落幅をみせた。

今日、男性トラックドライバーの平均年収は、全産業の男性労働者平均546万4千円に対し、大型トラックドライバーで463万2千円(84.8%)、中小型で430万6千円(78.8%)。

うち所定内給与額では大型ドライバーは83.6%、中小型77.8%と平均労働者との格差は、さらに大きい。

つまりドライバーたちは長時間労働をこなすことで、少しでも収入を得ようとしていることを物語っている。

かつてトラック業界は「キツイが稼げる」と言われ、若年層が多く参入していた。それが稼げなくなったにもかかわらず、キツさは変わらなかった。

例えば、ドライバーの超過実労時間数は全男性労働者の平均の2倍以上であり、実労働時間数も30時間ほど長い。長時間労働の結果、この業界の労災認定件数は突出して多い。

2021年度の脳・心臓疾患の労災支給決定件数は172件であり、そのうち56件が道路貨物運送業である。

過重労働によって引き起こされると考えられる同労災の3分の1は、この業界で起きている。この業界で働く者が多いために労災件数が多いわけではない。

雇用者数に占める支給決定割合は、全業種の平均値に対して、この業界の比率は10倍を超えている。

こうした労働環境ゆえに、なり手が減ったと考えられる。そもそも有効求人倍率は、求職者数に対する求人数の割合である。

「自動車運転の職業」では、求人数の増加よりも求職者の減少によって、有効求人倍率が上昇している。

「2024年問題」とは

過酷な労働環境を改善させる施策として、期待されたのが「働き方改革」だった。

2017年3月、労基法を改正し、罰則付きの時間外労働の上限規制の導入が決まった。

その内容は、原則として月45時間、年360時間が上限とされ、特別な事情があり労使が合意した場合に限り、年720時間となった。

しかし、上限規制は、働くすべての者に等しく適用されたわけではない。

自動車の運転業務については、十分な猶予期間を設定する必要があるとの観点から、改正労基法が施行された5年後に適用することになった。

それが2024年だ。

しかも・・・

続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2023/10/02の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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金森薫

金森薫

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