公開日 2023年9月7日

脱米ドル化に動くBRICS カギを握る中東産油国の加盟

BRICSの拡大プロセスを踏まえ、BRICSが開発途上国のみならず国際金融分野などにどのような影響を与えるかについて考えたい。
脱米ドル化に動くBRICS カギを握る中東産油国の加盟

8月22日から24日にかけて、第15回BRICS首脳会議が南アフリカのヨハネスブルクで開催された。

議長国の南アフリカのラマポーザ大統領は、24日に「BRICSは公平な世界、公正な世界、包摂的で繫栄する世界の構築に向けた取り組みで新たな門出を迎えた」と述べ、2024年1月1日から新たにBRICSに加盟する6か国を発表した。

その6カ国とは、アルゼンチン、エジプト、イラン、エチオピア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)であり、西アジア・北アフリカ地域(中東地域)からは4カ国が加盟する。

加盟国が11カ国となることで、BRICSは世界の人口の46%、国内総生産(GDP)の28%を占める存在となる。

BRICSへは新規加盟6カ国を含めて22カ国が正式に加盟申請を行っており、ラマポーザ大統領は、拡大プロセスの第1段階であり、今後も段階的に拡大を続けると述べている。

以下では、こうしたBRICSの拡大プロセスを踏まえ、BRICSが開発途上国のみならず国際金融分野などにどのような影響を与えるかについて考えたい。

BRICSの拡大プロセス

BRICSは、軍事同盟や政治的連盟とは異なり、経済的な括りを示す名称である。

この名称は、2001年に投資銀行のゴールドマン・サックスのジム・オニール会長(当時)が投資家向けレポートで、ブラジル、ロシア、インド、中国の国名の頭文字を用いてBRICs(sは複数形の意)と表記したことからはじまる。

2011年に南アフリカを加えBRICSと称されるようになった。

2000年代初めには、インド・ブラジル・南アフリカ間やブラジル・南アフリカ・インド・中国間で政府間の経済協力枠組みづくりが進み、2009年6月、ロシアのエカテリンブルグで、ロシア、ブラジル、インド、中国が初めて首脳会談を開催し、経済的連携強化のための組織化を進展させた。

2011年4月に中国で開催された第3回首脳会議で南アフリカが加盟し、2013年には上海に本部を置き、準備金1000億ドルを擁する新開発銀行(NDB)の設立で合意に達した。

同銀行へは、加盟5カ国が18.98%ずつ出資し、残りはエジプト、UAE、バングラデシュが出資している。

地域的観点からBRICSを見ると、南アメリカ地域のブラジル、ヨーロッパ地域のロシア、南アジアのインド、東アジアの中国、アフリカ地域の南アフリカと、異なる地域から加盟国が出ている。

今回の加盟国の拡大により、西アジア地域のイラン、サウジ、UAE、アフリカ地域のエジプト(北アフリカ)、エチオピア(アフリカの角)、南アメリカ地域のアルゼンチンが加わり、経済分野のみならず、地政学的にも重要性を増している。

新たに加わった加盟国の特徴としては、下記が挙げられる。

(1)重要な物流ルートに位置していること
(紅海およびペルシャ湾の海上ルート、国際南北輸送回廊(INSTC))
(2)エネルギー資源国であること

西アジアと北アフリカ地域(中東地域)で加盟申請をしているが今回の承認は見送られた国には、エネルギー資源国であるアルジェリア、クウェート、イスラム金融の拠点の一つであるバハレーンがある。

BRICSは今後も、こうした特色ある国々を段階的に加えていき、加盟国内の投資・市場経済化を推進させていくと考えられる。

こうして加盟国が増えると、経済規模が拡大し、世界貿易や投資における比重が高まり、その動向が開発途上国に強い影響力を持つようになるだろう。

そのひとつのカギとなるのが国際金融分野である。

米ドル需要に変化をもたらす

8月23日、オンラインで首脳会議に出席したロシアのプーチン大統領は、世界的な物流・輸送ルートの開発を扱う常設の委員会の設立とあわせ、国際金融システムの協力拡大を提案した。

その内容は、
(1)銀行間協力の発展、
(2)自国通貨の使用拡大、
(3)税務・関税・独占禁止監視機関の協力、
である。

また、24日、ブラジルのルーラ大統領は記者会見で、既存の銀行の取引量と信用方式に制約があるため、途上国の莫大な投資資金需要は満たされていないと述べ、BRICSの新開発銀行(NDB)の資金供与の重要性を強調した。

一方、上海協力機構への加盟に続きBRICSへの加盟も果たしたイランのライシ大統領は、24日の拡大会議で、加盟国間の経済関係において米ドルでの決済を減らし、自国通貨を利用するシステムを支持すると述べた。

自国通貨による二国間貿易の決済はすでに、BRICS加盟国間やBRICS加盟国と産油国との間で実施されており、8月14日にはインド政府がUAEとの原油取引をルピーで行っていると公表している。

インドは、世界の貿易が依然として低迷する中、輸出を拡大するため、自国通貨での貿易を推進する方向にある。同様に、新規加盟のUAE、サウジも加盟国間の貿易拡大に期待しているとみられる。

しかし、BRICS加盟国が米ドルの需要を減らし、さらに代替決済システムや共通デジタル通貨の創設に取り組むことになると、現行の国際金融システムに与える影響は小さくない。

とりわけ、UAE、サウジをはじめエネルギー資源国が米ドル以外の決済を推進することは、米国にとっては大きな懸念材料である。

国際金融全体への波紋

米ドルは、依然として世界の外貨準備の大半を占有し、国際貿易の決済での主要通貨である。

また、米国は、総額約22兆5000億ドルに達する米国債が取引される債券市場を有しており、現在のところ国際金融市場で高い優位性を保っている。

しかし、ロシアのプーチン大統領やイランのライシ大統領の発言に見られる米ドルでの決済を減少させようとする動きは、単に貿易の拡大を図るものではない。

そこには、 ・・・

全文を読みたい方はイーグルフライをご覧ください。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
(この記事は2023年9月6日に書かれたものです)

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プロフィール

水口章

水口章

外務省主管財団法人中東調査会上席研究員などを経て、敬愛大学国際学部教授。同大学総合地域研究所所長。法務省難民審査参与員。 湾岸戦争、米国同時多発テロ、イラク戦争、「イスラム国」(IS)問題など、中東地域関連問題についてマスメディアで解説してきた。

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