公開日 2023年9月8日

ピーター・シフ(Peter Schiff)4 米国株で強いのはマグニフィセント7のみ!9月はやはり株安?(後編)

最近の英語ニュースでは「マグニフィセント7」という言葉が目につくようになりました。それ以外の米国企業の状況は悪く、米国の適正金利が4.5%となると株安のようです。
ピーター・シフ(Peter Schiff)4 米国株で強いのはマグニフィセント7のみ!9月はやはり株安?(後編)

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米国10年債券適正金利が4.5%となり、株安に!

ブルームバーグ日本語版で、元ニューヨーク連銀総裁のダドリー氏が10年物米国債利回り適正値に関するコラムを発表しています。彼は3つに分けて説明しています。

1番目はニューヨーク連銀スタッフが「高くなっている?」と問うたため最近話題の自然利子率。景気やインフレに影響しないあるべき姿の中立金利です。これが以前の尺度よりも高くなっているのでは?という議論です。

高金利の中でもリセッションに陥っていないのが理由です。ジャクソンホールでパウエル議長は全く触れませんでしたが、市場は注目しています。ダラス連銀の資料のChart2を見るとリーマン・ショック前は2%、その後新型コロナショックで0.5%に、第1四半期は1.1%です。ダドリー氏は1%と想定しています。

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2番目がインフレ目標です。パウエル議長は2%に据え置きましたが、以前の記事で紹介したようにアックマン氏などは3%と主張しています。ピーターも、2%のままなのはありえないとしています。Fortuneによるとサマーズ元財務長官も高くなりうると発言しています。

ゾルタンの予言した構造変化によるインフレの「Higher for Longer」がコンセンサスとなった状況では2%は昔の基準であり、ダドリー氏は2.5%としています 。

3番目リスク・プレミアムです。「ゾルタンの予言」通りに低金利の時代が終わり「ブレトン・ウッズ3」体制化でのインフレや金利の「Higher for Longer」の状況では、「リスク・プレミアムを上げないと長期債券購入者は現れない」というのが理由です。

前回書いたように30年債券のオークションは不調で金利がその後上昇しました。ダドリー氏は、プレミアムは2007〜8年の世界金融危機時と同じ1%としています。

R*が1%、長期インフレ目標2.5%、長期債券購入のリスク・プレミアムが1%とすると「米国長期債券の適正金利は4.5%」です。先月10年債金利が2007年以来の4.3%を超えましたが、不思議ではないということです。

ダドリー氏は1980年代から続いている「債券のブル市場は終わった」としています。前々回の記事でご紹介した「家庭の負債の巨大さ」についてレポートしたのもニューヨーク連銀であり、景気が強いと主張しR*も長期インフレ目標も変更しないFEDとは異なる意見を持っているようです。ゾルタンもニューヨーク連銀出身でした。

このように「FEDの金融政策とは関係なく財政赤字増加により米国長期金利は上昇を継続」していくとピーターは予想しています。10年や30年の長期債の金利は利上げとは相関が低いからです。「FEDや市場の声とは反対の意見」です。

米国株は上昇中だが収益は悪化、破綻も増加!

Investopedeaにあるように「2022年のS&P500の株価は-18%」でした。

一方添付は「四半期ベースの米国上場企業収益」のチャートです。2022年は、株価は下落しましたが、上場企業の収益は前年比プラスでした。

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株価は将来の収利益を反映するからでしょう。「2023年第2四半期は前年比-6.5%と2四半期連続のマイナス」となり昨年の株価下落を反映した動きとなっています。

反対に年初来の株価は上昇しており、「将来の収益がプラスに転じる?」とも取れる動きです。しかし添付資料に書かれているように、「投資家が収益悪化を気にしていないだけ」で、「状況はよくない」ようです。

「マグニフィセント・セブン」とは黒澤明監督の名作「7人の侍」に影響を受けた米国の監督が西部劇版として発表した映画「荒野の7人」の英語原題名です。近年リメイクされた際は、この原題が採用されています。

8月27日のThe Kobeissi Letterに添付されたゴールドマンのチャートによると2023年に米国の主要500社からなる「S&P500は年初来15%上昇」しています。

しかしビッグテックの新メンバーであるGAFAM(グーグル・アマゾン・アップル・メタ・マイクロソフト)にテスラとエヌビディアを加えた「マグニフィセント7の上昇が54%」であり「その他の493社の上昇は4%」です。要するに「殆ど上昇していない」わけです。

日本のマスコミで報道されている「米国株高は虚構」であり、高金利にも関わらず銀行株がSVBの破綻で崩れ、「米国債券取引利益が8月後半には消失」した中でのウォール街が仕掛けた「豊富なキャッシュを持ち利上げが利益となるマグニフィセント7株高とAI狂騒曲」が起きていただけだったわけです。

史上初めて「ヘッジファンドの資金の3割がビッグ・テックに集中」しているそうで、不健全な状況となっています。決算での「AIという言葉は昨年比既に3倍」発せられているそうです。ここでは省きますが「AIの恩恵を受ける企業はそのうちのごく一部」です。

S&P1500の下位750社は、現在の「調達金利7%の状況には耐えられない」ようです。社債も大企業と異なり買い手がいないため、発行できません。赤字企業は資金不足となります。添付記事にあるように7月のチャプター11は昨年比+71%と「中小企業の破綻は急増」しているようです。

株高で米国企業は好調」という日本での認識は、どうも幻想のようです。

そしてブルームバーグによると、9月4日現在4.3%まで戻している「10年物米国債利回り4.5%を超えた時にS&P500は10%未満調整」するそうです。

9月はアノマリーでは米国株にとって「1年で最も弱い月」にあたります。金利がダドリー氏による適正値である4.5%にまで上昇すれば米国株式は再び調整に入るのではないでしょうか?

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プロフィール

松田遼司

松田遼司

東京大学史学科を卒業後、内資メーカーに入社、半導体需要予測を担当。IVYリーグ系M.B.A.をアート・マネジメントとインターナショナル・ビジネス専攻で修了後は外資系半導体メーカーでアナリスト・広報・企画等を担当。その後ウェブ系外資系企業CEOを経て起業、2度のイグジットを達成。さらには内資メーカーでメディカル事業部を立ち上げ、ロンドン市場上場の黒字企業のM&Aを実現させた。

映画・写真・美術・旅行・料理・ワイン・漫画などについて造詣が深い。
自分ではなく、世の中のためになる仕事に就くことを理想としている。

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