公開日 2023年9月1日

ダッチロール期の米国経済とドル

29日に発表された8月のコンファレンスボード消費者信頼感指数が急落し、7月の求人数も21年3月以来の低水準となり、市場ではにわかに「利上げは、もうないのではないか」との見方が浮上した。ようするに米経済見通し自体に変数が多すぎて、定まっていないのである。個人的には、米長期金利の現状が精いっぱいと思う。
ダッチロール期の米国経済とドル

ジャクソンホール講演の解説

8月25日、FRBパウエル議長は、これまで実施した利上げでは、景気を十分に減速させることはできていないとした上で、当面は政策金利を据え置く姿勢を示した。

ただ、米経済が力強く持続的な成長を続ける中、今後のインフレ抑制には追加利上げが必要になる可能性があるとの認識も示した。

パウエル議長は経済シンポジウム(各国中央銀行総裁)での講演で、「これまで歩んできた道のりを踏まえ、今後の会合では慎重に進むことになる」と述べ、「さらに引き締めを行うか、あるいは政策金利を一定に維持してさらなるデータを待つかは、慎重に判断していく」とした。

FRBは過去40年で最も急ピッチで利上げを進めてきた。7月会合では25bp(0.25%)の追加利上げを決定。政策金利=FF金利の誘導目標は5.25~5.50%となり、22年ぶりの高水準に達した。

次回会合は9月19・20日。米国のCPI(消費者物価指数)は昨年夏に記録した40年ぶりの高水準(9%台)から大きく鈍化し、コアCPI上昇率は6月と7月ともに前月比0.2%の情緒にとどまった。

だが、パウエル議長は、「2ヵ月間の良好なデータは、インフレがわれわれの目標に向かって、持続的に低下しているという確信を深める始まりに過ぎない」とし、「なすべきことはまだ多くある」と述べた。

特に言及した統計は、個人消費支出(PCE)の食品・エネルギー品目を除いた、PCEコアデフレーター。

前年比ペースでコアPCEインフレ率は、22年2月に5.4%でピークに達し、7月には4.3%まで徐々に低下してきた、6月、7月の低下は歓迎されたが、インフレが目標に向かって、持続的に低下しているという確信を築くのに必要な始まりにすぎないと発言している。

また、現在は金融政策を巡り、「両面のリスク(引き締めすぎ、引き締め不足)」があることも認めた。

「対策が少なすぎると、目標を上回るインフレが定着し、最終的に雇用面で高いコストを払って、より持続的なインフレにつながる金融政策が必要になる可能性がある、一方、やりすぎると経済に不必要な悪影響を与える可能性がある」とコメントしている。

FRB当局者の間には、これまでの利上げで借り入れコストが上昇したため、今後も米経済は減速を続けるとの見方から、追加利上げに消極的な向きもある。

一方、FRBが金利を据え置けば、力強い経済成長を背景にインフレ抑制は、予想以上に時間がかかると懸念する向きもある。

パウエル議長は両方の懸念に対する認識を示しつつ、融資基準や借入金利などの金融状況は全般的に引き締まっていると言明。

通常、こうした動向は経済活動の減速をもたらすとして、「今回のサイクルでもその証拠が確認できる」と述べた。

その上で「予想通りに景気が減速していない可能性を示す兆候に注意を払っている」と説明した。これまでFRB当局者は、向こう1年間の経済成長率が、長期トレンドである約2%を下回るとの予測に基づき、インフレのさらなる低下を見込んできた。

パウエル氏は、「持続的にトレンドを上回る経済成長を示す新たな証拠が確認されれば、
インフレ対応のさらなる進展はリスクに晒され、金融政策の一般の引き締めが正当化される可能性がある」とクギを刺した。

つまり、FRBは2%インフレ目標を変更するという見方について明確に否定したとも言えよう。

景気を十分に抑制するのに金利をどの程度引き上げる必要があるかは不透明であることも認めた。インフレ調整後の実質金利は歴史的な高水準に達しており、景気を熱しも冷ましもしない「中立金利」については、「大勢の見立てをはるかに上回っている」との認識を示した。

ただ、「中立金利を正確に特定することはできないため、金融政策対応の適切な水準については常に不確実性が存在する」とした。

この限りにおいては、FRBの追加利上げ余地の拡大という一部の市場の予測は立ち消えたといえる。

総じて、このジャクソンホールでのパウエル講演を受けた金融市場では、9月の追加利上げ見送りに傾きつつ、年内追加利上げの確率はやや高まり6割程度となっている。

その上で「11月FOMC(11月1日)での追加利上げ実施」との見方が中央値的になりつつあるようだ。

何故米国長期金利上昇が続くのか

そうした中、ドル円相場は147円台まで円が下落し、「11月の米国追加利上げ後は155円台まで円安が進む」との声が出始めた。

主因は米金利、とりわけ長期金利(米国10年債利回り)の上昇が止まらないことがある。

以下に、エコノミストたちの一般的な分析と見方(筆者の主観は除外)を記しておく。

8月22日、米10年債は4.36%台と2007年以来の水準に上昇した。
この背景には以下の3つの要因がある。

1. 米国景気の予想外の強さ

第一は米国景気の予想外の強さだ。

FRB議長は、「FRBのスタッフ予測では、直近の経済の回復力を考えると、もはや景気後退は見込んでいない」と述べている。

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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2023/08/30の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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金森薫

金森薫

国際エコノミスト。元外為・債券・株先ディーラーという実践経験を生かした経済分析、マーケット分析。

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