公開日 2023年8月10日

フィッチ・ショックは一過性か

今、日本株は米国株以上に下げている。これは、日本国債の格付けに対する不確実性が、見えにくいかたちで高まっている効果もあるのではないか。
フィッチ・ショックは一過性か

不意打ちだった米国債の格下げ

フィッチ・レーティングスは8月1日、米国債を突如、「AAA」から「AA+」へ引き下げた。

一時的にしろ、市場がショックに見舞われたことは確かだ。中でも円相場が日銀のYCC政策修正にもかかわらず、142円台前半から143円89銭(3日海外)まで売られ、日本の株価も目立って下げた。

とばっちりにすぎないが、一応、ムーディーズの判断の情報は知っておく必要があろう。

フィッチは以下3点を指摘している。

(1)直近20年のガバナンスの低下
(2)今後3年で予想される財政収支の悪化
(3)拡大する一般政府債務

順次、概説する。

(1)直近20年のガバナンスの低下

ガバナンスの低下=フィッチは繰り返される債務上限問題が、財政管理の信頼性を損ねていることに加えて、中期的な財政フレームワーク、及び拡大する社会保障費に対する取組みが不十分と指摘している。

少子高齢化を背景とした社会保障費増大を巡っては、米議会予算局(CBO)が、メディケア支出のGDP比が2022年の2.8%から、今後30年で5.5%へと倍増する見通しを示している(23年6月の長期財政見通し)。

(2)今後3年で予想される財政収支の悪化

2023~25年の財政赤字見通し=フィッチは一般政府の財政収支を、2023年がGDP比マイナス6.3%(22年マイナス3.7%)、24年=同マイナス6.6%、25年=マイナス6.9%と緩やかな赤字拡大を予想する。

この試算は2023年4Q~24年1Qにかけてのマイルドなリセッション、それによる税収の低迷、及び利上げによる金利負担増大を前提としている。

なお、CBOによる直近5月発表の2023-33年財政見通しを巡っても、利払い負担の増加等を背景に財政収支のGDP比が、2023年=マイナス5.8%→25年マイナス6.2%へと悪化する見通しとなっている
(利払い負担を除くプライマリー収支はGDP比マイナス3.3%→3.5%の悪化)。

(3)拡大する一般政府債務

拡大する政府債務=フィッチは一般政府債務残高が、2025年までにGDP比118.4%(2022年=同112.9%)に達すると予想する。

これはドイツやオーストラリアなどのAAA格付け国の中央値である39.3%、フランスやカナダなどのAAA格付け国の中央値である44.7%と比較し、2.5倍以上に達すると指摘する。

とはいえ、米国経済のダイナミックなビジネス環境、及び世界的な準備通貨である米ドルがもたらす財政ファイナンスの柔軟性が、格付けの強力なサポート要因であることも同時に指摘している。

米国債こそが世界経済のベース

フィッチは「ガバナンスの崩壊」を格下げの根拠の一つとし、「債務上限をめぐる瀬戸際のやりとり」を挙げているが、債務上限があるからこそ、議会少数派・野党がギリギリまで自分たちの主張をもとにホワイトハウスとの交渉を深め、議会多数派・与党から譲歩を引き出すことで財政赤字の拡大が緩やかになったり、「公平性」が幾分、確保された財政支出や減税が実施されたりする。

言い換えれば、合意までの「途上」で主張の対立は先鋭化してみえても、結論=政策自体は穏健になったり、中道に寄ることが期待され、実際、結局、毎度そうなっている。

逆に、債務上限がなく、どちらか一方の政党に財政に関する裁量があり、結果として、フィッチが望む「ガバナンス」が取れている状態は、「少数派によるけん制が効かない」ことを意味し、一部の有権者に偏った恩恵を与える財政支出や減税が実行される恐れがある。

とくに国民の意見が二分される現下の状況において、・・・

続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2023/08/08の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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金森薫

金森薫

国際エコノミスト。元外為・債券・株先ディーラーという実践経験を生かした経済分析、マーケット分析。

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