公開日 2023年6月18日

【21】円高に必要なのはL字型の暴落!

最近のブル相場で、銀行危機は去ったかのような風潮になり米国株式市場は上昇。悪材料に全く反応しなくなっています。しかし、状況は改善されたどころかさらに悪化しているのが実情です。これから考えられる株価の押し下げ要因をみていきましょう。
【21】円高に必要なのはL字型の暴落!

ゾルタンポズサー氏の予言でまだ当たっていないのが、I字型の急激な暴落とその後に続く_字型のスタグフレーションです。

しかし、この暴落も松島社長も予想されているように夏以降、年内には起きるのではないでしょうか?

ゾルタンポズサー16で書いたように、5月のファーストリパブリック銀行の破綻は、それまでのSVBなど3行の特殊事情のある銀行の破産とは異なり、どの地方銀行も危機にあるという局面に入ったということです。

長いベア相場に飽き飽きしている市場では問題は解決したかのような空気が漂っていますが、この記事に書いた状況は改善されたどころかさらに悪化しています。ブルームバーグのニュースでは、イエレン議長がさらなる地方銀行の吸収合併の可能性に言及しています。

1.利上げによる支払い額増加と
運用する米国国債の価値の減少による負債の増大

地方銀行危機により、米国では7月からの利下げが見込まれ負債の返済額が減少すると予測されていましたが、前回の記事で書いた通り年内に2回の利上げが見込まれています。毎月の利払いはさらに増えていくわけです。そして預金を使い運用している米国国債の価格は下落するので、負債はさらに上昇していきます。

ポズサー氏の主張する粘着的なインフレを市場も認識したので、短期国債だけでなく長期国債の価格も下落しています。米国のヘッジファンドの友人によると、金利が6%になると多くの銀行は堪えられないだろうとのことです。

2.商業用不動産価格の下落

Greenst.’ Commercial Property Price Indexによると、商業用不動産価格は昨年ピーク比較で-15%となり、特にオフィスは-25%となっています。

ホテルでもCNN英語版にあるように、サンフランシスコでは最大の客室室数のヒルトンと4位のホテル、合わせて10%のシェアがローンの支払いを停止するそうです。新しいオーナーを探しているのでまだ営業停止となるわけではないですが、オフィス空室率も34%に上昇し、稼働率が大きく下がっていたことが原因のようです。

一昨日のFOMCでは、パウエル議長も商業用不動産危機に言及していました。今後半年には不動産価格のさらなる下落が予想され、地方銀行を苦しめることになりそうです。

3.CMBS(商業用不動産担保証券)の償還額が
2023年と2024年が大きい

CMBCも地方銀行が米国国債と並んで運用に活用しています。それぞれ$120B(約1兆7千億円)、$140B(約2兆円)と巨額の償還を迎えるそうです。さらにその価値は、商業用不動産の下落と連動して下がることになります。

4.現在の株高は実態がない、PERが上昇

S&Pの上昇率は20%を突破、米国株式市場はベア・マーケットラリーを飛び越えて、ついにブル・マーケットに入っています。

しかし、この上昇は殆どがビッグテック(GAFAMやテスラ)が占めており、それ以外の上昇は3〜4%に過ぎないそうです。

まずは3月のSVB破綻により金利上昇で期待されていた金融株から流出した資金が、自己資金が潤沢なGAFAMに向かいました。4月にはバフェット氏が来日、米国投資家は日経平均の購入を開始します。5月には生成AIの経済効果が計り知れないとされ、エヌビディアなどの半導体株が高騰します。

しかし、ブルームバークの記事にあるように、同社のようなハイパーグロース株にかけての権威であるキャシー・ウッドは高騰前に全株を売却しています。目利きでも見抜けなかったわけであり、既存の投資銀行やファンドが盛り上げただけでバブルとの声も上がっています。

また、急騰したビッグテックの業績は決して良いわけではありません。例えば日経XTECHの記事に書かれているように、アルファベットの第1四半期の一株当たり利益は1.17ドルで前年同期の1.23ドルから悪化しています。S&P 500のPERも25.62まで上昇してきました。

悪材料に目を背けて一部の銘柄が上昇しているだけの、不健全な状態にあるわけです。

5.まだ赤字の未公開企業の破綻危機

ブルームバーグの記事によると、大手VCのタイガー・グローバルが数億ドル相当の未公開株の売却を行うそうです。SVBが破綻し借り入れが出来ない中で、スタートアップにとってはVCからの資金調達もやはり困難なようです。

他のVCも企業の選別を行っていく中で、今後赤字のSPAC合併上場企業も含めて資金繰りが回らずに破綻する企業が増えていくでしょう。利下げがなくなったことも痛手となるでしょう。

6.米国債務上限問題が解決し、巨額資金が国債購入に移る

ブルームバーグの記事にあるように、これだけでも、株価の5%の押し下げ要因になるそうです。

最近のブル相場で、銀行危機は去ったかのような風潮になっています。FOMCでさらなる2回の利上げに言及があったのにも関わらず、米国株式市場は上昇しました。悪材料に全く反応しなくなっています。こうした皆が上昇相場に乗り遅れないとしている市場は非常に危ういという解釈もあるのではないでしょうか?

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プロフィール

松田遼司

松田遼司

東京大学史学科を卒業後、内資メーカーに入社、半導体需要予測を担当。IVYリーグ系M.B.A.をアート・マネジメントとインターナショナル・ビジネス専攻で修了後は外資系半導体メーカーでアナリスト・広報・企画等を担当。その後ウェブ系外資系企業CEOを経て起業、2度のイグジットを達成。さらには内資メーカーでメディカル事業部を立ち上げ、ロンドン市場上場の黒字企業のM&Aを実現させた。

映画・写真・美術・旅行・料理・ワイン・漫画などについて造詣が深い。
自分ではなく、世の中のためになる仕事に就くことを理想としている。

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