公開日 2023年5月18日

ゾルタンポズサー【17】広がる脱ドル化の波

最近、英語ニュースでは脱ドル化(de-dollarization)の記事を毎日のように目にするようになってきました。脱ドル化の動きがBRICS+以外の西側諸国にも広がってきています。
ゾルタンポズサー【17】広がる脱ドル化の波

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世界中に広がる脱ドル化の波と米中2極ではない数極化の可能性

西原宏一さんも指摘されていましたが、最近、英語ニュースでは脱ドル化(de-dollarization)の記事を毎日のように目にするようになってきました。米国のメディアもポズサー氏の予言から目を背けられなくなったようです。

これは何度も記したように、3月に北京で中ロ首脳会談とイランとサウジとの国交回復への会議が実施され、ポズサー氏の唱える東のG7=BRICS+(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカにサウジ、トルコまたはエジプトを加えた)が実現したからです。

パキスタンがロシアとの原油取引に、アルゼンチンが中国からの輸入に人民元を使用するなどの報道は想定内でしょう。問題は、その動きがBRICS+以外の西側諸国にも広がってきたことです。

ASEANbriefingの英語記事にあるように、3月31日に閉幕したASEAN会議で米ドルやユーロへの依存を減らしていこうとマレーシアやインドネシアが提唱したのは予想外でした。

リチウムやニッケルのカルテルを構想しているインドネシアと米中の間で中立的だった(最近は北朝鮮の脅威で米国に説得され日本に接近している)韓国が交易に両国の通貨を使うというのは、まだ理解できます。

しかし、インドネシア、タイに西側だと思われていたマレーシアやシンガポールも加わり、QRコードによる交易決済システム作成をしようとしているというニュースには驚かされました。

5Gでも中国のファーウェイを使用する可能生もあるそうで、G7ブロック、BRICS+ブロックに続いてASEANも独自のブロック経済圏を構築しようとしているようです。ASEANも将来的には貿易に米ドルを介さないということです。

ECBの記事にあるラガルドECB総裁の発言は、ポズサー氏の言葉そのままです。

ウクライナ紛争後、世界は米国一極体制から米中対立により数極体制になり、それぞれができるだけ多くのメンバーを集めようとしている。

低成長、高コスト(高インフレ)、供給リスクの時代に入った。欧州は98%のレアメタルを中国に頼っており、EVに移行しようとしている自動車産業等には大きな影響を与える。

欧州は戦略的自立を目指しグローバルカンパニーは域内のサプライチェーンの確立を開始、域内シェアは45%と前年比倍増している、地政学リスクは高インフレ、低成長、世界貿易の鈍化を生む。

中露に近い国々が金を外貨準備として積み立てている。すぐにではないが、結果として米ドルとユーロの外貨準備でのシェア(2022年はそれぞれ57%と20%)は落ちる現在約3%の中国人民元のシェアは、ある研究によると30%になるというのです。

そして欧州は資本を統合するべきで、デジタル・ユーロの可能性を探索しているそうです。日本のマスコミでは戦略的自立という発言をしたマクロン大統領が糾弾されましたが、ラガルド総裁も同じ意見であり、欧州独自のブロック圏構想を抱いているようです。

ロイターの記事にあるように、ドイツ財務相も中国への供給網依存を減らしていくべきだが、デカップリングは考えていないと述べています。

自動車産業が急速にEV化をすすめている欧州において、レアメタルを中国にほぼ100%依存している状況では、デカップリングなど現実的ではないということでしょう。

このように、世界は西側対東側の2極でなく、ポズサー氏の主張するように多極のブロック経済に向かっているようです。

第2時対戦前の米ドルブロック、スターリング(英ポンド)ブロック、仏フランブロックと同じ構造のようです。米ドルやユーロはグローバルイーストやグローバルサウス間の交易においては使用されなくなり、米ドルやユーロの価値は中長期的には下落するというポズサー氏の意見に間違いはないようです。

交易で使用されなくなることよりも深刻なのは、外貨準備高における米国国債が金に代わられることではないでしょうか?中国、ロシア、サウジに続いてシンガポールも金の購入に積極的になっているようです。他のASEAN諸国も続くのではないでしょうか?

8月22日から24日にかけて、南アフリカでBRICS会議が開催されます。ブラジル紙の記事によると、開催国南アフリカ外相は、参加希望国は12カ国に上ると述べています。

アルゼンチン、アルジェリア、イランは既に加盟申請中という記事を目にしましたが、サウジアラビア、UAE、メキシコ、ナイジェリアの名前もあがっているようです。ロシア外相によると、エジプト、トルコ、インドネシアやアフリカ諸国も加わるそうです。

BRICS開発銀行と呼ばれる上海に本拠を置く新開発銀行のメンバーには、バングラディシュ、ウルグアイ、エジプト、UAEが名を連ねています。全てを合計すると12カ国になり、BRICS+は17カ国となります。GDPからみても人口からみても、G7に近づく規模の勢力となりそうです。

そして4月に総裁に就任した元ブラジル大統領であるエコノミストが添付記事によると、一見は大胆にみえる発言をしているのです。2026年までに最低でも30%の貸付を米ドルから加盟国の通貨に移すというのです。

BRICSコインなどの共同通貨やCBDC構想が進めば米ドルが使用されるのは西側諸国だけになると思っていましたが、どうもそう簡単にはいかないようです。裏返せば、70%は米ドルやユーロということになるからです。

サウジが原油取引に米ドル以外の通貨を認めると話しているように、原油取引においても一気に米ドルから人民元に移るわけではありません。ラガルド総裁の会見にもあったように、あくまでも中長期の話のようです。

しかし、徐々に進み、急に動き出すのだそうです。いつになるのでしょうか?

つづく・・・

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プロフィール

松田遼司

松田遼司

東京大学史学科を卒業後、内資メーカーに入社、半導体需要予測を担当。IVYリーグ系M.B.A.をアート・マネジメントとインターナショナル・ビジネス専攻で修了後は外資系半導体メーカーでアナリスト・広報・企画等を担当。その後ウェブ系外資系企業CEOを経て起業、2度のイグジットを達成。さらには内資メーカーでメディカル事業部を立ち上げ、ロンドン市場上場の黒字企業のM&Aを実現させた。

映画・写真・美術・旅行・料理・ワイン・漫画などについて造詣が深い。
自分ではなく、世の中のためになる仕事に就くことを理想としている。

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