公開日 2023年3月28日

国際関係に一大事が起きる予兆(上)

クレディ・スイス・グループ問題は米国が火を付けた可能性が高い。米国の動き次第では、ここからとんでもない動きに発展していく可能性がある。バイデン政権が来年秋の大統領選挙を控えているだけに目を離せない局面に入ってきたとも言える。
国際関係に一大事が起きる予兆(上)

クレディ・スイス・グループ(以下CS)やUBSグループ(以下、UBS)は、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の制裁回避を金融専門セクション(ウェルスマネジメント)が助けたかどうかを巡り、米司法省の調査で精査を受けている銀行の一角だ。

同省が送付した一連の召喚状に両行が含まれている。

この情報開示要請はUBSによるCSへの買収提案という結果を招いた銀行不安(3月15日~)が生じる(3月15日)前に行われたものだ。

召喚状は一部の米大手銀行の関係行員にも送られ、同省調査の焦点をロシアの制裁対象顧客と、取引した銀行マンの特定・こうした顧客に対する過去数年の審査の検証に絞った。

ロシアによるウクライナ侵攻で制裁が拡大される前には、CSはロシア人富豪を顧客としていることで有名だった。

ピーク時には同行はロシア人顧客のために600億ドル(約8兆円)強を管理し、年間5億~6億ドルもの収入を得ていた。

昨年5月にロシアの個人顧客との取引を終了した時点で、CSが管理していたロシアの個人顧客の資金は約330億ドルと、ウェルスマネジメント事業の規模が大きいUBSよりも50%多い水準だった。

米司法省は昨年、ロシア・プーチン大統領の政治的盟友である同国富裕層に対する制裁を実施するためタスクフォース(作業班)を立ち上げた。それ以来、米政府は多くの彼らの資産を押収している。

そして今年2月には、制裁対象のオリガルヒの一人が所有するNYとフロリダ、ハンプトンズの邸宅差し押さえにも動いた。

ロシアの戦費補充先の筆頭がオリガルヒであることは間違いなく、その資産を封印することで少しでも戦況をウクライナ優勢に持ち込むためにもCSへの査定を強めたのが米司法省だった。

裏を返すと、CSはウクライナ戦争でロシアを間接的に支援する立場にあったということになる。

この動きと関連するかは分からないが、3月14日(つまり、CSの筆頭株主=サウジ政府系銀行がCSへの追加出資を否定し、一気に“CS破綻”が浮上した前日)、CSが2022年の年次報告書で財務報告に関する内部統制に重大な弱点があったと報告した。

どうやら、CS問題は米国が火を付けた可能性が高い。ただし、米国の真の狙いが「対ロシア戦略」なのかは定かでない。

それほどCS(UBSも同じだが)は世界のアンダーグラウンドに深く根を張っているわけで、米国の動き次第では、ここからとんでもない動きに発展していく可能性がある。

バイデン政権が来年秋の大統領選挙を控えているだけに目を離せない局面に入ってきたとも言える。

クレディ・スイスの転落

スイス金融最大手UBSの会長(元モル・スタ幹部)のもとに3月第3週、緊急のTELが入った。相手はスイス当局幹部3人で、その中身は提案の名を借りた最後通告だった。「UBSがCSを買収し、救済せよ」と。

こうしたことが金融で起きれば、どの国でも緊急事態になる。だがスイスにとっては、ほとんど存亡に関わる危機に等しかった。

何世紀もかけて培われたスイスの経済モデルや国家のアイデンティティーは、世界の富を安全に守ることを基盤に成り立っていた。

これは銀行だけの問題ではない。スイス自身が救済を必要としていた。それは銀行不安が高まり初めて丸一日も立たない3月16日のことだ。

CSからは預金が大量に流出していた。創業167年のスイスを代表する金融機関は、数日中に破綻してもおかしくない状態と思われた。

週末まで同行を下支えするため、スイス国立銀行(中央銀行)は、500億ドル(約6.5兆円)余りの資金供給枠を4倍に拡大させようとしていた。

米英の規制当局はスイスの規制当局に対し、CSが世界市場を崩壊させないよう求めた。スイスの財務相と中銀総裁、金融規制当局トップはUBS会長にTELし、2つの選択肢を提示した。

だが実質的に選べるのは一つだった。すなわち、CSの膨大で複雑なバランスシートを十分理解する機会がないまま同行を買収するか、それともCSが時間をかけて崩壊の道をたどるに任せるか、というものだ。

後者の場合、世界金融センターとしてのスイスの信用が地に落ちる可能性があると、UBS幹部自身が懸念していた。

必死の電話攻勢と首都ベルンで開かれた政府主導の会合の末、UBSがCSを32億ドルで吸収買収することで合意した。

スイス政府は2008年の金融危機の後、二度と公的資金を使って銀行を救済しないと誓っていたが、この取引を完了させるため、急遽、非常事態に対応する法律を用いてそれを行った。

スイスのアイデンティティーであり、スイスのグローバル銀行破綻は直ちに世界に波及し、スイスに対し長く厳しい風評被害が続くことになると判断したのだろう。

スイス2位の大手銀行が瞬く間に終焉を迎えたことは金融市場を動揺させ、米西海岸でシリコンバレー銀行(SVB)破綻を機に発生した銀行危機が世界的な広がりを見せる格好となった。

スイスが完全にダメージを抑え込める時系列には程遠いと思われる。

世界レベルの銀行が二行あることは、世界金融市場におけるスイスの地位を保つための安全装置と見なされていた。

両行の強制的な合併で、それが一行に減り、しかも得体の知れない外圧に介入されたとなればスイスの位置付けが大きく後退することを意味しよう。

スイスは欧州の中でも特殊な立場を自認してきた。

中立的な立場を取る(実際は明らかに違う)「民主国家」スイスの銀行は、遠方の投資家や世界の富裕層に秘密厳守の安全な避難場所を提供している。

スイスの銀行システムはGDPの5倍の規模で、大半の経済国よりも大きい。CSを買収した後のUBSのバランスシートは、スイス経済の2倍に相当する規模となる。

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(この記事は 2023年3月25日に書かれたものです)

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金森薫

金森薫

国際エコノミスト。元外為・債券・株先ディーラーという実践経験を生かした経済分析、マーケット分析。

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