公開日 2023年2月2日

米連邦議会下院の6月危機とは

FRBは恐らく今春以降、インフレが収まり経済が、ソフトランディング的なリセッションになるよう、難しい金融政策の舵取りを迫られる。
米連邦議会下院の6月危機とは

デフォルト・リスクの怖さ

米国連邦債務上限額(31兆4千億ドル)が1月19日に達した。

イエレン財務長官は法律の期限である6月5日までは、年金財政からの流用などで必要な財政をカバーしていくが、債務上限を引き上げる法案が期限までに連邦議会で可決しなければ米国は債務不履行(デフォルト)に陥ると表明した。

「ほぼ毎年の通過儀礼であり、最終的には期限ギリギリで可決成立する」
との見方が一般的であるが、今年は明らかに違う。

それは共和党が、かろうじて多数派を形成した下院の新議長選での異様な推移をみれば明らかであり、間違いなく市場を巻き込む「大混迷」になるだろう。

今から市場関係者・投資家はこのリスクを織り込んでおくべきだ。

バイデン政権の関係者や民主党議員の一部は、米政府に1兆ドルのプラチナコインを発行させることを検討している。

現在、早くも議論が紛糾し始めた、この連邦政府債務上限問題で、上限の引き上げなどで民主共和両党が合意できず、政府がデフォルト・リスクに直面した際に備える苦肉の策である。

政府が1兆ドルのプラチナコインを発行し、それをFRBが買い入れれば、政府がFRBに持っている政府預金に同額が入金され、政府は債務を増やすことなく、歳出を行うことができる。

過去にも政府債務上限問題が浮上するたびにプラチナコイン発行案が議論されてきた。

しかし、これは中央銀行による政府救済であり、FRBの法的独立に反する行為。イエレン財務長官は前FRBの議長だっただけに、この案は100%、通用しない。

ただ、早い段階からのプラチナコイン発行案が流布されている背景に、「今回はニッチもサッチもいかないのではないか」という総悲観論が、民主・共和両党の議員の間に広がっていることがある。

6月以降、特別措置(公務員退職年金・障害者基金の流用)も限界となり、政府の資金繰りが厳しくなれば、政府は利払いを優先してその他の歳出を停止するだろう。

それはイコール、政府機関の閉鎖であり、経済に大きな打撃を与えかねない。

また、デフォルト・リスクを織り込んで金融市場は動揺を始めるだろう。その場合には、FRBが現在進めている月間1千億ドル弱の保有証券の残高削減(QT)を中断し、さらには昨年秋のBOE(英中銀)のように市場の安定化を図るために緊急国債買い入れに踏み切るよう迫られる事態も生じる可能性が考えられる。

つまり、FRBの金融政策全体の大きな撹乱要因となり得るのである。

さらに、2011年の政府債務上限問題の際には、上限引き上げで議会が合意した後に金融市場が大きく混乱したことも市場は忘れていない。

2011年には、草の根保守の「ティーパーティー」の支援を受けた共和党が、オバマ政権と激しく対立していた。

デフォルトの期限だった8月2日の直前の7月末にかけての与野党間の交渉で、債務上限問題はなんとか解決された。

そして期限当日の8月2日に債務上限引き上げ法が成立した。それを受けてムーディーズは政府債務格付けAaa(トリプルA)の据え置き確認を発表。

ところが、その3日後にS&Pは米国の財政赤字削減への対応が不十分であるとの認識を示し、8月5日に米国の長期発行体格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げたのである。

世界で最も信用力が高いとされた米国債の格下げは、金融市場に大きな混乱をもたらした。株価は大幅に下落し、それは消費者心理の悪化を通じて、経済に悪影響を与えたのである。他方、格下げされた米国債自体は、安全資産としてむしろ買われた(利回りは低下)。

ただ、現在の米国債市場のマーケットメイクの機能は当時と比べて相当、低下していることから、再び米国債が格下げされれば、今度は、米国債も売り込まれる可能性がある。

その場合には、世界的な長期金利の上昇が生じ、金融市場の混乱はより深まるのではないか。

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(この記事は 2023年1月31日に書かれたものです)

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プロフィール

金森薫

金森薫

国際エコノミスト。元外為・債券・株先ディーラーという実践経験を生かした経済分析、マーケット分析。

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