公開日 2022年4月21日

目から鱗のインフレ高進理論

昨年12月のECB理事会では、人口動態といった構造的な変化や中国の役割、グローバル化の課題が経済モデルでは捉えきれないインフレ高進への移行を示唆する可能性があるのかどうかについて議論された。
目から鱗のインフレ高進理論

パンデミック直後に高インフレを予測

世界経済が新型コロナウィルスのパンデミックに襲われた2020年3月、インフレ率はゼロに向かっているように見えた。

ところが当時、元BOE(英イングランド銀行=中央銀行)の政策委員であるチャールズ・グッドハート氏(経済学者)が「2021年にインフレ率が5~10%になり、高止まりする」と予測していた。

彼は世界経済に劇的な変化が起きつつあり、財政刺激策とパンデミック後の回復は、そうした変化を加速させるだけだと推論していた。

安い労働力の過剰供給が続いたことで何十年も物価と賃金が低水準にとどまっていた。それが労働者不足の時代、ひいては物価上昇を招くことになったと指摘した。

コロナウィルスのパンデミックは、この30~40年のデフレ圧力と、向こう20年のインフレ復活との境目になるだろう。2022年末頃の先進諸国のインフレ率は3~4%で落ち着き、その水準で数十年とどまると予想する。

コロナ前の10年間のインフレ率は1.5%程度だったと当時のインタビューで答えている。炯眼中の炯眼(鋭い眼力)である。

現在、変わりゆく人口動態がいかに労働力人口を圧迫し、物価を押し上げるかに関するグッドハート氏の理論は米国や欧州、中国の中央銀行当局者の注目を集め、同氏が正しいかを巡って議論が沸いている。

同じく元BOEの政策委員だった人物は彼の考えについて「間違いなく米欧の中銀を心配させる。正しければ中銀は後手に回ることになりバランスシートの早期縮小を考えるだけでなく、実際にそうせざるを得なくなり、利上げも加速する」という。

その一方で、IMFの筆頭副専務理事など長期的なインフレ見通しが、グッドハート氏の考えるほど厳しいものなのか、懐疑的な見方を示す向きもある。

ゴピナートIMF筆頭専務理事曰く、「日本では労働者の減少と退職者の増加は逆にインフレ低下の原動力になっているではないか、人口動態の観点からある特定の論法に基づいて、非常に単純な結論を引き出せると思わない」と昨年の金融関係者会合でグッドハート氏に対し、疑問を呈した。

人口動態がベースなり

3月の米国CPIは前年同月比+8.5%と約40年ぶりの高水準となった。ユーロ圏の3月CPIも同+7.5%と伸びが加速し過去最大の上昇幅を記録した。

ウクライナ戦争を受け、世界のエネルギーやコモディティー、食品の価格が高騰しており、インフレは一段と加速する可能性が高いとされる。

グッドハート氏は、20年9月の共著「人口動態の大逆転」で自身の理論について、こう説明している。


1990年代以降の低インフレの主因は抜け目のない中銀の政策にあるのではなく、中国や東欧から何億人もの安価な労働者がグローバル化した経済に加わった人口ボーナスのおかげだ。

人口ボーナスによって賃金と富裕国に輸出される製品価格は押し下げられた。女性労働者と出生数の多いベビーブーム世代と共に、1991~2018年の先進諸国の労働力は2倍以上に増えた。


現在、先進諸国の生産年齢人口(15歳~64歳)は、第二次世界大戦以降で初めて減少し始めており、出生率も低下している。中国の生産年齢人口は今後30年で2割近く減少すると予想されている。

労働力が逼迫するほど労働者は賃上げを求め、次に物価が上がる。同時に、企業は労働力不足を補い、グローバル化したサプライチェーンを制限しようとする国家主義的・地政学的な圧力を弱めるため、国内での製造・投資を増やす。

それは製造コストを増大させ、労働者の交渉力を高めることになる。高齢者は生み出すよりも多くを、特に医療で消費するため世界の貯蓄額は減少する。

それらが全て金利の押し上げ要因となる。

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(この記事は 2022年04月19日に書かれたものです)

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金森薫

金森薫

国際エコノミスト。元外為・債券・株先ディーラーという実践経験を生かした経済分析、マーケット分析。

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