公開日 2022年4月23日

ディーラーのプライス提示の裏側

FXプライスの特徴について前回のつづきです。今回は店頭取引のプライシングにおけるディーラーの役割を中心にお伝えします。
ディーラーのプライス提示の裏側

前回の記事

5.店頭取引のプライスはディーラーが作り出す

ところで、仮にすべての業者のプライススプレッドが同じであったとして、それでもプライスが違うということが、なぜ起こるのでしょうか。理由はいくつかあります。

まず、FXであれば、すべての業者は電子ブローキングや人間のブローカーでの直近の取引の成立価格がいくらであるかを常に追っています。

現物債券であれば、業者は最も流動性があって取引量の多い債券先物の価格推移や、指標銘柄と呼ばれるその時々の取引量が最も多い現物債券の価格変動を追っています。

共有している情報はほぼ同じで、これだけでは業者による提示価格の差はほとんど発生しないはずです。

実は業者は以上の情報に加えて、短期から中期的に価格の方向性に影響を与える数々の情報を集めて、その瞬間瞬間の相場観を持ったうえで価格提示をしているので、そのために業者間で価格差が発生するのです。

有能なディーラーであるほど考慮するべき多くの要因に関する正確な情報源とそれらの分析力そして判断力を持って、自分なりの「意志のある」プライスを作り出しています。

6.ディーラーはポジションによってプライスを変える

そしてもうひとつ、ディーラーがプライス提示をする際に考慮する大きな要因があります。

それは、その業者全体やディーラー個人のポジションです。

様々な法令や業者内におけるポジション量の制限値(リミット)は最も厳格に守られるべき重要な基準で、ディーラーたちはこれを超えることになるような取引ができないことは言うまでもありませんが、このリミットに近づくようなことも避けたいと考えています。

また、日常的に起こる状況としては、ポジションリミットまでには十分な余裕があっても早く処分したい買い持ち(ロング)のポジションがあれば、そうでない場合に比べて低めのプライス提示を行うことになります。

市場のプライスレベルよりも若干低いオファー・レートであれば、顧客は買いやすいですし、ビッド・レート売りたくはないプライスとなります。

すなわち業者としては保有を続けたくないロングの商品を手放すチャンスが増えますし、そのポジションが増えてしまうチャンスを減らすことができるのです。 

ただし、時に顧客は何らかの理由で他の業者の提示するビッド・レートよりも低いはずのビッド・レートでも売却してくることがあります。

この場合、不幸にも業者のポジションは増大してしまいますが、市場価格よりも安い価格で買い取っていれば他の業者への売却も比較的容易にでき、しかも多少の売却益も期待できます。

7.クイック&ナロープライスが良いプライス

FXのマーケットで顧客や他の銀行にプライスを提供している市場に流動性を供給する役目を担っている大手銀行のFXディーラーが特殊なのは、顧客も他の銀行もプライス提示を求める際に、ビッド・レートかオファー・レートのどちらが欲しいかを伝える必要がなく、FXディーラーは常にビッド・レートとオファー・レートをセットとなった2WayPriceを提示することが求められています。

顧客が売りに来たのか買いに来たのか分からない状況下で先ほどのような様々な要因を考慮して、どのような市場環境下であっても可能な限り小さいスプレッドのプライスを瞬時に提供する、いわゆる「クイック&ナロー」プライスを提供できることは一流のディーラーの証です。

店頭取引で常に顧客や他の業者向けのプライス提示をして取引をしているディーラーは瞬間瞬間にこのようなことを総合的に考慮して判断したうえで素早くプライス提示を行っているのです。

そうやって取引を重ねて何年も収益を上げ続けていけるディーラーだけが生き残っていけるのがFXの世界なのです。

現在は電子ブローキングとこれにつながった各種システムを経由して顧客へのプライス提示がされる時代になっていますが、筆者がFXディーラーの現役であった頃は、土日以外は24時間市場が閉まらないことに加えて以上の様なことが要求されるためにFXのインターバンクディーラーはあらゆる金融商品のディーラーの中で最もハードな仕事と言われていました。

8.クロス円レートの作り方(再び)

さて、瞬間瞬間で判断してプライス提示を求められるFXのディーラーの仕事を悩ましくしているもののひとつにクロス円レートでの取引があるのですが、この理由の一つとしてビッド・レートとオファー・レートの扱いの分かりにくさがあります。

前々回の記事で少し触れましたが、クロス円レートのオファー・レートの計算にはUSD/JPYのレートのオファー・レートが必ず使われ、掛け算通貨ではオファー・レート、割り算通貨ではビッド・レートが使われます。

例えば、
CAD/JPYのオファー・レートはCADを売ってJPYを買うレートですので、これを計算するには
USD/JPYではJPYを買ってUSDを売る側のレートであるオファー・レートを使う一方、
USD/CADではCADを売ってUSDを買う側のレートであるビッド・レートが使われます。

EUR/JPYのオファー・レートはEURを売ってJPYを買うレートですので、これを計算するには
USD/JPYではJPYを買ってUSDを売る側のレートであるオファー・レートを使う点は一緒ですが
EUR/USDではEURを売ってUSDを買う側のレートがオファー・レートであるためにこれが使われます。

1990年前後のまだエクセルなどの表計算ソフトなどが無い時代であっても、FXディーラーは電卓を使ってクロス円のビッド・レートとオファー・レートを瞬時に計算して2Wayでプライス提示する必要がありました。

当然のことですが熟練者と言っても人間がする手計算ですから、数百億円規模のディールでは時折ミス・プライスによるドラマがディーリングルーム内で上演されていました。もちろん筆者もそのドラマの主役を演じたことがあります(笑) 

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石塚彰人

石塚彰人

元外銀バリューアップ・マネージャー

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