公開日 2021年12月15日

中国習政権「歴史決議」の位置づけ

今年11月、中国共産党が第19期中央委員会第6回全体会議(六中全会)を開催し終えた。決議で目立った言葉は習体制のキーワードである「新時代」。これは何を意味するのか。過去の2つの歴史決議とは違う主なポイントも含めて解説します。
中国習政権「歴史決議」の位置づけ

★★★上級者向け記事

確かに中国人は歴史に生きる人々である。「一治一乱」。かつてひとつの王朝が倒れ、次の王朝が建つとき、官僚たちの重要な使命は、全王朝の正史を書くことにあった。その考え方は今も踏襲されている。

中国共産党が第19期中央委員会第6回全体会議(六中全会)をこの11月に開催し、「歴史決議」を採択して終えた。意味するものは一体なにか。

それを知るためには、やはり党の歴史決議(毛沢東時代の1945年4月・鄧小平時代の1981年6月)の重要性を理解しておかねばなるまい。

過去の歴史決議の持つ重み

独善的な言い方かもしれないが、何よりもそれは死者1000万人、被害者1億人とも言われる文化大革命の歴史を、党が1981年に総括し、決議をだしたときの重みに起因するのではないかと思う。

それは、鄧小平が最高実力者だった時の第11期の六中全会で採択された。決議の正式名称は「建国以来の党の若干の歴史問題に関する決議」である。

文革を「指導者が誤って引き起こし、党と国家と各民族人民に大きな災難をもたらした内乱だった」とし、毛沢東が「重大な誤りを犯した」とする評価に踏み込んだ歴史的な決議だった。

文革で傷ついたとはいえ、「偉大な領袖」と神格化されたカリスマ指導者の毛沢東である。部分的でもその権威を否定したことで、鄧小平は自らの権力の掌握を内外に知らしめた。

このときの六中全会では毛沢東の後継者とされた華国鋒を党主席から外す決定もなされている。

一方で、文革という悲惨な歴史をどう総括すべきかとの問いの答えは、単なる権力闘争の意味合いだけではなく、当時、多くの中国の人々が党に求めたものだった。文革で被告にあった多くの人々がこの決議を受け入れた。

だからこそ共産党は執政党としての歩みを何とか先に進めることができた。そんな重みが1981年の歴史決議にはあったと思われる。

1945年の第一の歴史決議も、それまでの路線対立に決着をつけ、毛沢東の最高指導者としての揺るぎない地位を確立させた重要なものだ。

建党100年の節目である今年、習近平指導部が40年ぶりの歴史決議を出す準備をしているとの話が出ると、さまざまな憶測が流れた。

習氏は改革開放路線を否定するのではないか、文革を否定した鄧小平の決議もひっくり返されるのではないか等々。過去の経緯を考えれば、そうした声が出るのも無理もないことだった。

ただ、実際に公表された新たな決議はそれほどわかりやすいものではなかった。

最多登場は習主席の名前なり

今回の3回目の「歴史決議」の主なポイントは以下の通り。

消えた「個人崇拝禁止」

過去の2つの決議との関係について、「その基本的論述と結論はいまなお通用するものである」と明記した。

ただ、「個人崇拝禁止」という言葉が決議に入らなかったことで、この問題に習体制が後ろ向きであることを示唆したと受け止められた。

毛沢東への個人崇拝が文化大革命などの惨劇を生んだとの反省から、81年の決議では徳と才を兼ね備えた指導者たちによる集団指導体制を必ず樹立し、いかなる個人崇拝も禁止する」とし「指導者の事実上の終身制を撤廃する」とも明記していた。

文革の否定を踏襲

文化大革命については「10年の内乱」、「災難」と表現した。毛沢東は「当時の政治状況について完全に誤った判断をした」とした。

1950年代の大躍進運動や人民公社化などにも言及し、「毛沢東同志の誤りがますますひどくなっているにもかかわらず、党中央はこれらの誤りをすぐに是正することができなかった」と記した。

天安門事件の評価変更せず

1989年の天安門事件については、「重大な政治風波(騒ぎ)」と明記。そのうえで「党と政府は人民に寄り添い、旗艦鮮明に動乱に反対し、社会主義の国家政権と人民の根本的利益を守り抜いた」とした。

習氏を2つの「核心」に

習氏個人を礼賛するような表現は控え目。

ただ、「習近平同志の党中央の核心、全党の核心である地位を断固として擁護」するなどの表現が入った。胡錦涛氏を除き、毛・鄧・江の3氏は「党中央の核心」と表されてきた。

決議では毛沢東と習氏だけが核心と明記され、しかも習氏にはさらに「全党の核心」という表現が加わった。

習氏の「新時代」を強調

決議で目立った言葉は習体制のキーワードである「新時代」。鄧小平が打ち出した「改革開放」が40回記載されたのに対し、「新時代」は実に47回にも上った。

「全党・全軍・全国各民族人民により緊密に団結し、中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現に向けてたゆまず奮闘しなければならない」と訴えた

今年11月の「歴史決議」の正式名称は、「党の100年の奮闘の重要な成果と歴史経験に関する決議」。

過去の2つの歴史決議と違って、「経験」という言葉が入った。香港紙が「歴史決議に準ずる扱い」と評したが、これまでの決議とは性格が異なるものであるようだ。

目的が現体制の権威付けと正統性の確立にある点は同じと言っていい。

しかし、過去の決議が直前の党内の動きを否定し、路線対立や権力闘争に、決着をつけるものだったのに対し、今回の決議はひたすら現在の政権が正しいということを、肯定し続ける内容になっている。

全文3万6000字のうち半分以上は2012年以降の習近平体制の取り組みの紹介や、評価について費やされた。登場する指導者の名前の回数も、習氏が22回で最も多く、毛沢東は18回、鄧小平が6回、江沢民が1回、胡錦涛が1回の順だった。

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(この記事は 2021年12月13日に書かれたものです)

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プロフィール

金森薫

金森薫

国際エコノミスト。元外為・債券・株先ディーラーという実践経験を生かした経済分析、マーケット分析。

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